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日本乾溜工業
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企業分析
強み
日本乾溜工業株式会社グループの強みは、建設事業と防災安全事業の多角的な展開による安定した収益基盤と、地域社会への貢献を重視する経営姿勢にあります。建設事業では、交通安全施設、法面、環境メンテナンス工事の施工に加え、地盤改良や地すべり対策などの幅広い分野で専門性を有し、公共投資の安定的な推移に支えられています。また、環境型自然土防草舗装材の製造・販売といった独自の製品も展開しています。防災安全事業においては、民間の工場や官公庁向けの防災・安全用品の販売が堅調で、両事業がバランスよく成長しています。 グループは「安全と信頼」をキーワードに、顧客の信頼に応えることを重視しています。これは、長年の実績と、従業員一人ひとりの能力開発を重視する人材戦略によって支えられています。中核人材の育成や、働きやすい環境整備にも注力しており、女性従業員の活用、完全週休2日制の実施、フレックスタイム制の導入など、従業員の成長と組織への貢献を促す取り組みが進められています。 また、コンプライアンス経営を重視し、社会課題の解決を通じて企業価値の向上を目指しています。温室効果ガスの排出量削減やエネルギー効率の向上など、サステナビリティへの取り組みも推進しています。 財務面では、安定した売上高と利益を確保しており、2024年9月期の連結業績では、売上高175億45百万円、経常利益9億28百万円を計上しています。また、自己資本比率は67.6%と高く、安定した財務基盤を有しています。
弱み
日本乾溜工業株式会社グループの弱みとして、まず建設資材価格や労務費の高騰の影響を受けやすい点が挙げられます。建設業界全体で資材価格の高止まりや建設労働者不足が続いており、これが同社グループの工事採算悪化につながる可能性があります。資材調達先や工事下請業者との取引関係強化、市場情報の入手により影響を最小限に抑えようとしていますが、外部環境の変化に業績が左右されるリスクは依然として存在します。 また、労災事故等のリスクも存在します。建設事業部門では、重大な労災事故や第三者事故が発生した場合、発注者から指名停止等の処分を受ける可能性があり、その後の受注に影響を及ぼす恐れがあります。同社グループは安全教育やパトロールの強化に努めていますが、事故リスクを完全に排除することは難しいと言えます。 さらに、従業員の確保に関するリスクもあります。建設事業部門では、国家資格を持つ管理技術者や施工管理担当の人員が必要であり、少子高齢化や建設業界への就労人口減少により、人材獲得が停滞する、または従業員の離職につながる可能性があります。これは、同社グループの事業継続や成長を阻害する要因となり得ます。 加えて、同社グループは温室効果ガス削減目標を定めていません。環境への配慮は重要視しているものの、具体的な削減目標がないことは、今後のサステナビリティに関する取り組みにおいて課題となる可能性があります。 また、人材投資やシステム投資による販売費及び一般管理費の増加も、利益面でマイナス要因となっています。2024年9月期には、これらの投資により営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比で減少しています。投資は将来的な成長に不可欠ですが、短期的な利益圧迫は同社グループの弱みの一つと言えます。 最後に、同社グループは株式の大部分を株式会社FCP18が所有しており、特定株主に依存した経営体制であることも懸念点として挙げられます。