強み

山陽特殊製鋼グループの強みは、長年培ってきた「高清浄度鋼製造技術」にあります。この技術は、特にベアリングの素材となる軸受用鋼において重要で、鋼の清浄度がベアリングの寿命に直接影響を与えるため、同社にとって非常に大切な役割を果たしています。また、電気炉による製鋼から最終製品までの一貫生産体制を日本、欧州、インドに有し、グローバルに事業を展開しています。主力製品である軸受用鋼は、自動車、産業機械、建設機械業界など、幅広い分野で使用されています。 近年、競合他社の生産能力増強や技術力向上により、国際競争が激化していますが、同社グループは事業基盤の強化と技術革新に注力しています。具体的には、**高炭素鋼「TOUGHFIT®」**の商品化や、製造プロセスへのDX活用による品質・コスト競争力の強化、顧客のカーボンニュートラルに貢献するエコプロダクトの開発を推進しています。また、グローバルサプライチェーンでの競争力を活かし、収益基盤を強化する一方、高収益アイテムの販売拡大や新規アイテムの発掘にも取り組んでいます。 さらに、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネや高効率化、グリーンエネルギー活用、エコプロダクト開発、エコソリューション展開などを推進し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。 人材育成では、「自律考動型」の人材育成に力を入れ、主体性とチャレンジ精神を持つ社員を育成しています。階層別研修や女性活躍推進のための教育、外部研修などを実施し、社員の能力向上を図っています。人事考課制度では、成果だけでなく、目標達成へのプロセスや人材育成を評価し、社員のエンゲージメント向上を目指しています。また、多様な人材による共創を重視し、ワーク・ライフ・バランスを支援する制度やシニア世代の活躍を促進する制度を導入するなど、働きやすい職場環境づくりにも取り組んでいます。

弱み

山陽特殊製鋼グループの弱みとして、まず外部環境の変化に影響を受けやすい点が挙げられます。同社グループの製品は、自動車、産業機械、建設機械業界など特定の業界に大きく依存しており、これらの業界の生産水準が低下すると、受注量の減少が予想されます。また、世界経済の動向や為替相場の変動も経営成績に影響を与える要因となります。 次に、原燃料・諸資材の価格変動リスクがあります。鉄スクラップ、合金鉄、電力などの原燃料や諸資材を外部から購入しており、これらの価格が上昇すると利益が圧迫される可能性があります。サーチャージ制を導入しているものの、すべての原燃料や諸資材に適用できるわけではなく、価格上昇の影響を完全に回避することは難しい状況です。また、特定の供給業者や地域に依存しているため、災害や事故、感染症などにより供給が停止した場合、生産活動に支障をきたす恐れがあります。 さらに、外注加工への依存もリスク要因です。一部の生産工程を外注加工受託業者に委託しており、これらの業者の生産活動が停止すると、同社グループの生産活動にも影響が及ぶ可能性があります。 国際競争の激化も同社にとっての課題です。競合他社の生産能力の増強や技術力の向上により、特殊鋼業界の国際競争はますます厳しくなっており、競争優位性を維持するためには継続的な技術革新やコスト削減の努力が求められます。 また、気候変動に関するリスクも無視できません。気温の上昇や異常気象、自然災害などが原材料の調達難やコスト増、生産停止を引き起こす可能性があります。さらに、脱炭素対応が遅れると、生産コストの上昇や新たな税負担、事業活動の制限などの影響を受ける恐れがあります。 これらのリスクに対処するため、同社グループは事業基盤の強化、技術革新、サプライチェーンの多様化、リスクマネジメント体制の強化などに取り組んでいますが、依然として外部環境の影響を受けやすい体質が残っていると言えます。