強み

フジテック株式会社の強みは、エレベーター、エスカレーター、動く歩道などの昇降機の製造から販売、据付、保守、修理までを一貫してグローバルに展開している点です。この垂直統合型ビジネスモデルにより、顧客の多様なニーズに迅速かつ柔軟に対応できる能力があります。世界24カ国・地域に広がる生産拠点と販売ネットワークは、地域に根ざした経営を実現し、グローバル市場での競争力を高めています。 さらに、グローバルな生産・調達体制を強化し、各拠点間でコストと品質のバランスを考慮した部品を供給することで、商品力を強化しています。また、技術革新への取り組みも大きな強みとなっており、大型エレベーター向けの「制御盤交換パッケージ」の開発や、エレベーターと連携したロボットによる自動配送システムの実現などが同社の技術力を証明しています。 品質面では、高級ホテルで培った乗り心地をより多くの顧客に提供することを目指し、製品開発や部品解析、故障解析を通じて品質とコストの両立を追求しています。また、人材育成にも注力しており、従業員が成長を実感できる職場環境を提供し、顧客満足度向上に繋がる研修を行っています。 財務面では、安定した自己資本比率と自己資本利益率を維持しており、これが経営基盤の強さを裏付けています。

弱み

フジテック株式会社の弱みとして、まず指摘されるのは、地域ごとの業績変動です。例えば、東アジア地域では、中国の不動産不況による新設事業の受注減や市場価格の下落により減収となっており、香港、台湾、韓国での工事損失引当金の増加も営業利益を圧迫しています。一方、南アジア地域では、インドでの受注増加やシンガポール、マレーシアでの修理工事増加により増収増益となっているように、地域によって業績にばらつきが見られます。また、円安による輸入コストの増加も課題であり、価格改定による採算改善で相殺しようとしているものの、継続的な円安は利益を圧迫する要因となります。さらに、新設事業における市場価格の下落も懸念材料であり、受注減に加えて価格競争が激化すると、収益性が悪化する可能性があります。人材面では、女性管理職の割合が低い（1.2%）ことや、男性の育児休業取得率が32.4%にとどまっていることから、ダイバーシティ＆インクルージョンへの取り組みが課題と言えます。さらに、配当性向が85.2%と高い一方で、株価収益率は20.84倍となっており、株主への利益還元と企業成長への投資とのバランスが今後の課題となる可能性があります。また、投資有価証券の評価損のリスクも存在し、市況悪化や投資先の業績悪化により減損処理が必要となる場合、業績に影響を与える可能性があります。これらの要素が、同社の事業展開におけるリスク要因となり得ます。