強み

日本精工株式会社の強みは、長年にわたる軸受製造の技術力とグローバルな事業展開力にあります。1916年の創業以来、軸受の生産を続け、産業機械や自動車といった幅広い分野で製品を提供しています。特に、玉軸受、円すいころ軸受、円筒ころ軸受、自動調心ころ軸受、精密軸受といった多種多様な軸受を製造する技術力は、同社の競争力の源泉となっています。また、同社は、グローバルに拠点を展開しており、米州、欧州、中国、アセアン・オセアニアといった主要地域をカバーしています。各地域には統括会社を設け、現地のニーズに対応した事業運営を行っています。さらに、技術開発への投資も積極的に行っており、軸受の摩擦低減、軽量化、長寿命化などのコアテクノロジーを追求しています。2024年3月期の研究開発費は15,602百万円に達しており、産業機械事業と自動車事業を中心に研究開発が進められています。また、同社はデジタル変革（DX）を推進しており、デジタル人材の育成に注力しています。全社的な研修を実施し、実践的なトレーニングや専門チームの支援により、現場への適用を進めています。これらの取り組みにより、同社は市場の変化に対応し、持続的な成長を目指しています。

弱み

日本精工株式会社の弱みとして、外部環境の変化に対する脆弱性が挙げられます。同社は、インフレの高止まり、為替変動、中国経済の先行き懸念、地政学リスクの高まりといった経済の不透明な状況に影響を受けています。特に、2024年3月期には、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響により、生産活動が低下しました。また、同社は、グローバルな事業展開を行う中で、各国の労働関連法令や税務課題への対応に課題を抱えています。これらの問題に対応するため、コンプライアンス体制の強化や国際税務対応リソースの拡充を進めていますが、対応が遅れるリスクがあります。さらに、有能な人材の確保も課題の一つです。グローバルな競争が激化する中で、事業拡大や戦略遂行に必要な人材を確保できないリスクがあります。また、同社の事業ポートフォリオ及び収益構造の転換には、DXを推進するデジタル人材の育成が不可欠ですが、その育成が十分に進んでいない可能性もあります。株式の政策保有についても、同社は関係強化のために他社の株式を保有していますが、これらの保有が資本コストに見合う便益をもたらしているかを検証する必要があり、保有の合理性を継続的に評価する必要があるでしょう。