強み

イリソ電子工業の強みは、まず「顧客価値を創造する100年企業を目指す」という経営理念と、社会や顧客の期待を超える「つなげる」を実現するというパーパスに基づいた企業活動にあります。コネクタを通じて、人と環境に優しい未来を創造し、さまざまな機能を容易につなげることを目指しています。 技術面では、可動（フローティング）BtoBコネクタなどの独自技術の蓄積があり、これにより顧客のTCO（Total Cost of Ownership）削減に貢献する製品を提供できる点が強みです。また、車載市場で培った耐振・耐熱、接続信頼性、高速伝送技術を活かし、これらを自動車以外のモビリティ分野にも展開しています。 グローバル展開においても、同社は強みを発揮しています。海外市場への進出にはリスクが伴いますが、販売拠点と生産拠点の両面から慎重に検討し、リスクを評価した上で事業展開を行っています。生産拠点の集中を避け、複数拠点での生産体制を構築しています。2025年には秋田に新工場を建設し、生産拠点の分散と地産地消の強化を図る予定です。また、海外売上高は連結売上高の約80%を占めており、グローバル事業展開を積極的に進めています。 さらに、人材育成にも力を入れており、多様な人材が活躍できる組織体制を構築しています。階層別研修やスキル習得のための研修、ダイバーシティに関する研修などを実施し、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。また、在宅勤務制度やフレキシブルタイム制度を導入し、働きやすい環境の整備にも取り組んでいます。これにより、従業員のエンゲージメント向上を図っています。 これらの要素が組み合わさることで、イリソ電子工業は、技術力、グローバル展開力、人材育成力を強みとして、持続的な成長を目指しています。

弱み

イリソ電子工業の弱みとして、まず価格競争の激しい電子部品業界に属している点が挙げられます。国内外に多くの同業他社が存在し、価格競争に巻き込まれると業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。独自技術の蓄積や新製品開発に取り組んでいますが、常に価格競争のプレッシャーに晒されている状況です。 次に、生産拠点が中国の上海に集中している点も課題です。現在、複数拠点での生産体制を構築していますが、上海の生産子会社に生産が集中しているため、同拠点での操業が不可能になるような不測の事態が発生した場合、業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。2025年には秋田工場を稼働させ、生産拠点の分散を図ることでこのリスクを低減する方針ですが、現時点ではまだ課題が残っています。 また、製品の欠陥やリコールに関するリスクもあります。同社は品質マネジメントシステムを導入し、製造物責任賠償保険にも加入していますが、大規模なリコールや製造物責任賠償が発生した場合、コストや企業評価に重大な影響を与える可能性があります。特に、車載向け製品は高い信頼性が求められるため、製品の欠陥リスクには常に注意を払う必要があります。 さらに、技術革新のスピードが速い電子部品業界において、新製品開発が遅れた場合、将来の成長と収益性が低下する可能性があります。同社は市場ニーズを的確に把握し、研究開発投資を行っていますが、技術革新の波に乗り遅れないよう、継続的な開発努力が求められます。 加えて、海外事業展開に伴うリスクも存在します。予期しない法律や規制の変更、不利な政治・経済要因の発生、輸送遅延、社会インフラの未整備、政治変動、テロ行為、感染症の流行など、さまざまなリスクが内在しており、これらが発生した場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。 最後に、国内の賃金格差も課題です。全社平均で女性社員の年収は男性社員の70%程度となっており、従事する業務の違いが主な原因とされていますが、同一等級での平均年収を比較すると、管理職においても賃金格差が存在しており、改善の余地があります。 これらの弱みを踏まえ、イリソ電子工業は、価格競争への対応、生産拠点の分散、品質管理の徹底、技術革新への対応、海外リスク管理、賃金格差の是正など、さまざまな課題に取り組む必要があると考えられます。