大幅急落後に短期反発した日経平均の主な事例(2005年以降)
大幅急落後に短期反発した日経平均の主な事例(2005年以降)
2008年10月:リーマン・ショック後の暴落と反発
急落(2008年10月10日): 世界的な金融危機(リーマン・ショック)の余波で、日本株もパニック的な売りに見舞われました。この日、日経平均は前日比-881円(-9.62%)と暴落し、終値8,276円と約5年ぶりに9,000円を割り込みました。米国株急落を受けて東京市場でも売りが売りを呼ぶ展開となり、週末時点で週間下落率が過去最大となる異常事態でした。市場では信用収縮への不安が極限に達し、投げ売りや追い証(マージンコール)による投資家の連鎖的な売却が相場を押し下げ、まさに**「パニック売り」**の様相でした。
反発(2008年10月14日): 3連休明け、各国の協調策が打ち出されたことで市場心理が一転します。主要7カ国(G7)による金融安定策合意や欧米での銀行資本注入策が好感され、10月14日の日経平均は前週末比+1,171円(+14.15%)と記録的な急反発となりました。終値9,447円で上昇率14%は史上最高(1990年以来)であり、東証一部銘柄の98%が上昇する全面高となりました。暴落時に広がった極度の悲観はひとまず和らぎ、当局の対応策発動により「金融システム崩壊は避けられる」との安心感が広がったと伝えられています。
投資家心理: 急落直後は「1987年のブラックマンデー級」との声も出るほど市場は恐慌状態で、投資家心理は極度のリスク回避に傾いていました。しかし、各国政府・中央銀行の素早い危機対応策によって過度の悲観が後退し、空売りの買い戻しや押し目買いが一斉に入りました。結果として「最悪期は脱した」との見方が台頭し、短期筋も売り姿勢を縮小、急激なリバウンドにつながりました。
2011年3月:東日本大震災後の急落と反発
急落(2011年3月15日): 東日本大震災と福島第一原発事故に起因する未曾有の危機で、日本株は歴史的な急落に見舞われました。震災発生直後の3月14日に日経平均は-633円安で9,620円と大台1万円割れし、翌15日には原発事故への恐怖から終値ベースで前日比-1,015円(-10.55%)もの暴落となりました。下落率10%以上は1987年ブラックマンデー、2008年リーマン後に次ぐ過去3番目の記録です。取引所全体の97%の銘柄が下落し、出来高も過去最高水準に達するなど、投資家のパニック的な換金売りが広がりました。当時は「日本経済崩壊の恐れさえある」との声も出て、マーケットには危機感が漂っていました。
反発(2011年3月16日~): 翌16日、当局や日銀の迅速な対応策によって悲観一色の市場に買い戻しの動きが出始めます。日銀は震災発生後、連日緊急資金供給を実施し、この日までに総額15兆円規模の流動性供給を行いました。過度な不安が和らぐ中で東京市場は5日ぶりに急反発し、日経平均は一時+500円超の上昇となりました。終値も小幅ながら+24円とプラスに転じ(8,401円)、その後1週間ほどで9,000円台を回復しています。特に原発事故への過度の悲観が一服すると、急落で割安となった輸出関連株などを中心に買い直しの動きが強まりました。
投資家心理: 15日の暴落時には「危機的な雰囲気が漂い、株が投げ売り状態に陥っていた」と報じられています。しかし、政府・日銀の緊急対応や米景気の底堅さも意識され、16日以降は「状況の悪化がひとまず食い止められた」との安心感が台頭しました。投資家心理は極度のパニックから徐々に落ち着きを取り戻し、「震災後も日本経済は持ちこたえられる」との見通しが広がりました。震源地に近い東北地方以外の生産復旧や世界的な金融緩和期待も追い風となり、悲観一色だった市場に冷静さが戻っていきました。
2015年8月:チャイナ・ショック後の急落と反発
急落(2015年8月24日): 中国経済減速への不安から世界同時株安(いわゆる「チャイナ・ショック」)が発生し、日本株も大きく売り込まれました。2015年8月下旬、上海株急落と人民元切り下げを背景にリスク回避が加速し、8月24日の日経平均は前営業日比-895円(-4.61%)安の18,540円と急落しました。1日の下落率が4%超となるのは約2年ぶりで、東証一部銘柄の99%以上が下落する全面安となりました。中国発の景気悪化シナリオに怯えた投資家が世界中で株式を売却し、日本市場でも**「資金を現金化して温存する」動きが広がったと伝えられています。先行き不透明感からまさにセリング・クライマックス(投げ売りの極致)**の様相を呈し、「もはや買いで利益を上げるのは神業」とまで言われた状況でした。
反発(2015年9月上旬): 暴落後も数日間は乱高下が続きましたが、各国の政策対応が相次ぐと次第に落ち着きを取り戻します。中国人民銀行による利下げ・資金供給策や米FRBの利上げ先送り観測などが追い風となり、9月9日の東京市場で日経平均は前日比+1,343円(+7.7%)高と7年ぶりの大幅上昇を記録しました。上昇率7.7%は当時として金融危機直後以来の規模で、中国政府の景気支援策への期待や円安基調への戻りが一気に買い戻しを誘発しました。この急騰により、日経平均は8月下旬の安値(一時17,000円台前半)からわずか2週間程度で1,000円以上反発し、18,000円台後半を回復しています。
投資家心理: 急落当初、投資家心理は「中国経済への不信感」と「世界景気の先行き不安」で極度に冷え込み、リスク資産を一斉に処分する動きが目立ちました。しかし9月に入り、中国当局の株式買い支えや財政出動の観測が広がると過度な悲観は後退しました。「売り方の買い戻し(ショートカバー)が膨らんだ」との指摘があるように、ヘッジファンド勢も下落に賭け続けることへの不安からポジション解消に動き、バーゲンハンティング(割安株物色)の動きが活発化しました。結果的に、「最悪期は過ぎた」との安心感とともに投資家心理は急速に改善し、自律反発を促しました。
2016年6月:ブレグジット・ショック後の急落と反発
急落(2016年6月24日): イギリスの国民投票でEU離脱(Brexit)が決定し、世界市場が動揺しました。投票結果判明直後のこの日、円相場が1ドル=99円台まで急騰する円高となり、日本株は輸出企業の業績悪化懸念から大幅安に見舞われます。日経平均は前日比-1,286円(-7.9%)安の14,952円と約1年8ヶ月ぶりの安値水準に急落しました。下落幅1,286円は歴代8番目の大きさ、下落率約8%も歴代9番目に相当する記録的急落で、東証一部の値上がり銘柄数は僅か6銘柄(値下がり約99.7%)という壊滅的な状況でした。市場には「まさか離脱するとは」との衝撃が走り、リスクオフの嵐により株先物にはサーキットブレーカー(取引一時停止措置)まで発動されました。
反発(2016年6月下旬~7月): 急落後、各国中央銀行の支援姿勢や政策期待が相次いで示されると、過度な恐慌状態は比較的短期間で沈静化しました。実際、6月27日以降の日経平均は3日連続で反発し、24日の急落分(-1286円)のほぼ半値にあたる約+614円を3営業日で取り戻す展開となりました。6月29日終値は15,566円まで戻し、投資家の間でも「英国ショック後の混乱は一服した」との声が聞かれました。その後もイギリス新政権の早期発足や日銀の追加緩和観測などで下値不安が和らぎ、7月中旬には日経平均は16,000円台後半まで回復しています(安値から約+10%の上昇)。
投資家心理: ブレグジット決定直後は世界同時株安となり、「先行きの不確実性」に投資家は極度に怯えました。しかし急落後すぐに各国で政策的な対応(英中銀の緩和示唆や日銀・ECBの支援期待)が出たため、リスク回避姿勢は徐々に和らいだとされています。実際、急落直後の段階で「日本株は売られ過ぎの水準に達した」との見方もあり、割安とみた買いが下支えとなりました。外国人投資家の投げ売りが一巡すると国内勢の買い戻しも入り、市場には「ショックは一時的」との認識が広がりました。短期間で半値戻しを達成したこともあり、「最悪の事態は織り込んだ」として投資家心理は落ち着きを取り戻したのです。
2018年12月:米金融引き締め・貿易摩擦での急落と反発
急落(2018年12月25日): 2018年末、米国の利上げ継続や米中貿易摩擦の激化を背景に世界景気の減速懸念が強まり、クリスマス前後に株式市場は大荒れとなりました。12月25日の東京市場でも、日経平均はついに心理的節目の20,000円を割り込み、終値19,155円(この年の最安値)を記録。この日は前営業日比で約-5%の急落となり、10月初めのバブル後高値24,270円からわずか3ヶ月足らずで5,000円以上下落した計算です。背景には米FRBによる金融引き締め(利上げ・資産縮小)が市場の流動性を低下させるとの不安や、米政府機関閉鎖などの政治リスクも重なり、年末休暇で流動性が細る中で売りが売りを呼ぶ悪循環が生じたことがあります。投資家心理は「リセッション(景気後退)を織り込み始めた」とされるほど弱気に傾き、"恐怖指数"とも言われるVIX指数も急騰するなど、マーケットは極度の警戒感に包まれました。
反発(2018年12月27日): 米国市場がクリスマス休暇明けに急騰したことを受けて、日本株もすぐに劇的な反発を見せました。12月27日、日経平均は前日比+3.9%前後の上昇となり、TOPIXとともに約4%の急反発。わずか2営業日で20,000円台を回復し、"行き過ぎた悲観"にストップがかかった形です。S&P500種指数が前日に+5%近い上昇となるなど世界的に投資家心理が改善に転じ、「年末商戦が好調な米経済は株価急落を正当化しない」との見直しが入りました。この急反発について市場関係者は「恐怖の熱病に終止符を打つ反発」であり、「これは単なるデッド・キャット・バウンスではなく本物の転換点かもしれない」と捉えたと報じられています。実際その後も買い戻しは2~3週間続き、2019年1月中旬には日経平均は20,000円台後半まで持ち直しました。
投資家心理: 急落時は「投資の世界が終焉するかのような恐怖」に投資家が囚われていましたが、急激な反発がその恐怖を打ち消したとされています。アマゾンの好調な売上高発表などで米消費の底堅さが示されると「悲観論や破滅的予想は現実のファンダメンタルズに基づかない」との冷静な声が台頭。暴落局面で待機していた潤沢なキャッシュが「バーゲンハンター(押し目買い勢)の復活」とともに市場に流入し始め、投資家のセンチメントは悲観の底から一気に正常化しました。結果として**「下げ過ぎた分の自律反発」**との見方が市場のコンセンサスとなり、年明け以降の株価持ち直しにつながっています。
2020年3月:コロナ・ショックでの急落と反発
急落(2020年3月9日~13日): 新型コロナウイルス感染拡大による未曾有の危機(コロナ・ショック)では、市場変動も史上例を見ない激しさとなりました。2020年2月末から3月にかけて世界同時株安が進行し、特に3月9日~13日の週に日経平均は週初から5営業日で合計-3,318円(約-16%)も急落しています。3月9日には終値ベースで歴代20位となる-1,050円安(約-5%)、3月12~13日にも連日1,000円超の下げ幅を記録(13日は-1,128円安で歴代13位)しており、日経平均は3年4ヶ月ぶりの安値16,552円まで下落しました。感染拡大と都市封鎖で実体経済が麻痺するとの懸念、原油価格暴落や急激な円高ドル安も重なり、投資家は**「未知のパンデミックリスク」**に恐怖しながら我先にと株式を売却していきました。各国株式市場では売買停止措置(サーキットブレーカー)が発動されるなど、マーケットは世界的パニックに陥りました。
反発(2020年3月下旬~4月): 世界各国がリーマン危機を上回る規模の緊急対策に踏み切ったことで、株式市場も3月下旬以降急速に落ち着きを取り戻しました。FRB(米連邦準備制度)は3月15日に政策金利を一気にゼロ近くまで引き下げ、無制限の量的緩和を表明。日本銀行も3月16日に臨時会合を開き、ETF買い入れ枠の倍増など大規模緩和策を決定しました。各国政府も史上例のない財政出動(現金給付や企業支援策)を打ち出した結果、「最悪シナリオは回避される」との楽観が広がり始めます。日経平均は3月19日に16,552円で底を打った後急反発に転じ、月末には18,917円まで戻してわずか2週間で+14%以上の上昇を見せました。4月以降も回復基調が続き、夏頃までにコロナ前の水準を概ね取り戻しています。
投資家心理: パンデミック初期には「金融危機以上の不況が来る」との極端な悲観が支配的で、現金化優先の投げ売りが相次ぎました。しかし各国の前例のない行動(大幅利下げや財政出動)により**「必要な手段は何でも講じられる」との安心感が市場に浸透しました。恐怖指数VIXがピークアウトし始めたのも3月下旬で、それと歩調を合わせるように投資家心理は落ち着きを取り戻します。「売られ過ぎた株式への買い戻し余地は十分」との見方が台頭し、実際公的年金や日銀ETF買い、個人投資家の押し目買いが下支えとなって急速なリバウンドが実現しました。また、在宅消費関連株の物色など、新たな投資テーマも生まれたことで悲観一色だったマーケットに冷静さが戻った**形です。
2024年8月:日銀政策変更による急落と反発
急落(2024年8月5日): 直近では、日銀の金融政策変更をきっかけにした急落劇が挙げられます。日経平均は2024年7月に史上初の42,000円台を付けるほど上昇していましたが、日銀のサプライズ利上げ観測が浮上すると状況が一変しました。8月5日(月)、東京株式市場は朝から売り注文一色となり、日経平均終値は前週末比-4,451円安の31,458円と歴史的暴落に見舞われます。下落幅4,451円は1987年ブラックマンデー後を超える過去最大の暴落幅で、1ヶ月前の高値から実に25%近い急落となりました。背景には日銀が7月末会合で長年維持してきた超低金利政策の転換姿勢を示し、政策金利の引き上げ(+0.1%→+0.25%)に踏み切ったことがあります。植田日銀総裁が「上限0.5%を壁と特に意識していない」と発言したことで市場は過度反応し、為替はわずか3営業日で1ドル=153円台から141円台へ急激な円高となりました。この円高ショックで輸出株中心に売りが殺到し、新NISAで投資を始めたばかりの個人投資家が証券会社窓口に殺到して説明を求める姿が報じられるなど、市場には動揺が広がりました。
反発(2024年8月6日以降): しかし暴落翌日から市場は急速に持ち直します。8月6日(火)は一転して買い注文が優勢となり、日経平均は**+3,217円高と過去最高の上げ幅で急反発しました。わずか1日で前日の下げ幅の7割超を取り戻した計算で、その後も短期的な買い戻しが継続。暴落から約3週間後の8月26日には日経平均は38,000円台を回復**し、大半の下落分を埋め戻しました。市場では日本企業の業績好調や依然緩和的な政策環境が再評価され、行き過ぎた悲観に対する修正が進んだとみられます。また、想定外の乱高下に対して政府・日銀が適切な市場安定化策を講じるとの期待感も支えとなり、8月後半には落ち着きを取り戻しました。
投資家心理: 暴落当初は「金融緩和終了で相場の時代が終わる」といった極端な悲観が広がり、新規参入の個人投資家まで巻き込んだパニック売りとなりました。しかし、翌日の歴史的リバウンドによって過度な悲観は一気に後退しました。市場には「さすがに売られ過ぎ」との冷静な見方が戻り、急落時に広がった不安心理は一定程度和らいだとされています。実際、急落直後には証券各社からも「企業業績や経済の基調は健全で、今回の乱高下は行き過ぎだ」という声が聞かれ、投資家も次第に落ち着きを取り戻しました。結果的に、市場には**「一定の安心感が漂う」**状況となり、「あの急落は一時的なパニックだった」と総括する向きが多くなっています。ただし急落の引き金となった金融政策の不透明感は残るため、投資家は再発リスクを注視しつつも冷静さを保つ姿勢を学んだと言えるでしょう。