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報復関税合戦の主要事例と株式市場への影響

公開日:2025年04月07日
Note

報復関税合戦の主要事例と株式市場への影響

はじめに

国家間の**関税措置の応酬(報復関税合戦)**は、貿易摩擦を激化させるだけでなく、金融市場にも大きな影響を与えてきました。以下では、1900年代以降の主要な報復関税合戦の事例を時系列に整理し、その発表時点から半年間の米国および日本の株式市場(主要株価指数)の動きを分析します。それぞれの事例について、発動・発表日や背景、当事国(例:米中・米EUなど)、そして株価(米国:ダウ平均・S&P500、日本:日経平均など)の直後から半年間の変動率・回復状況をまとめます。

1930年:スムート・ホーリー関税法と世界的報復関税

背景(米国 vs. 多数国)

1930年6月17日、米国フーバー政権はスムート・ホーリー関税法を成立させ、2万品目以上の輸入品関税を平均20%引き上げました。世界恐慌下で自国産業保護を図る措置でしたが、各国は猛反発し、カナダや欧州諸国など25ヶ国以上が報復関税を発動しました。例えば、カナダは米国からの輸入16品目に報復関税を課すなど、大規模な関税戦争に発展しました。

株価への影響(米国)

法案成立直前から市場心理は悪化しており、フーバー大統領が署名した週には米国株式市場が暴落しました。実際、大統領署名(6月17日)の直後に株価は急落し、7月までに主要株価指数が約12%下落しています。当時の金融専門誌も「関税法署名」と「株式市場の激しい崩落」を並列で報じ、両者の関連が示唆されました。その後も報復関税の応酬で世界貿易が縮小し、株式市場は半年後も回復せず、下落基調が続きました。1930年末までにダウ平均は前年から大幅下落し、米国経済はさらに深刻な不況に陥りました。

株価への影響(日本)

日本も関税戦争の煽りを受けました。米国は生糸など日本の主要輸出品にも高関税を課し、日本経済に打撃を与えました。日本の株式市場も輸出不振や世界恐慌の影響で低迷し、半年後も低調でした。当時の日本は金解禁の影響もあり深刻なデフレ不況下にありましたが、米国の高関税政策はそれに追い打ちをかけたとされています。

1960年代:米欧「チキン戦争」

背景(米国 vs. 西欧EEC)

第二次大戦後、米国の安価な鶏肉が欧州市場に流入し欧州農家が打撃を受けました。そこで1962年、欧州経済共同体(EEC)は米国産鶏肉に報復関税(1ポンド当たり約13.5セント)を課しました。これに対抗し、1963年に米国のリンドン・ジョンソン大統領は報復関税措置(いわゆる「チキン税」)として、ライトトラック(小型トラック)に25%の関税を課すなどの制裁関税を発表しました。対象にはデンプンやブランデーも含まれましたが、中でもトラック関税は現在まで残る措置となりました。

株価への影響(米国)

「チキン戦争」は特定品目・業界に限られたため、米国株式市場全体への直接的影響は限定的でした。関税発表前後で関連企業(欧州車メーカーや米国農産品会社)の株価に一時的な変動はあったものの、主要株価指数(ダウ平均など)は大きな調整を経験しませんでした。実際、1962年に一時株価調整局面があった後、関税措置が本格化した1963年から1964年にかけては株式市場は堅調に推移し、1964年半ばまでにダウ平均・S&P500とも上昇基調を維持しています(ケネディ政権期の景気拡大の影響が大きかったため)。したがって、チキン戦争による半年後までの市場への悪影響はほとんど見られず、米国市場は当時の好調な景気に支えられて上昇を続けました。

株価への影響(日本)

この貿易摩擦は主に米欧間のもので、日本市場への直接的インパクトは限定的でした。当時日本は高度成長期であり、日経平均は関税合戦の影響をほぼ受けず上昇基調にありました。もっとも、米国のトラック関税によって欧州製小型トラックが締め出された結果、後年日本(とアジア)の自動車メーカーが北米に現地生産進出する契機となりました。これは長期的に日本の自動車株にプラスに作用した面もあります。

1980年代:日米貿易摩擦と100%関税制裁

背景(米国 vs. 日本)

1980年代は米国と日本の深刻な貿易不均衡の時代で、特に半導体や自動車を巡る摩擦が高まりました。1987年3月、レーガン政権は前年締結した半導体協定の履行を日本が怠ったとして、約3億ドル相当の日本製品に100%の報復関税を課すと発表しました。対象は日本製のコンピュータやテレビ、電動工具などで、戦後初の対日制裁関税でした。日本政府は深い失望を表明しましたが、世界貿易体制への悪影響を懸念して日本側からの報復関税は行わない方針をとりました。

株価への影響(米国)

発表当時、米国株式市場は長い強気相場の後半でした。制裁関税の報道により、エレクトロニクス分野など一部企業株が売られたものの、米国全体の株式指数への影響は小幅に留まりました。実際、このニュースが出た1987年4月頃にダウ平均は一時調整しましたが、その後も上昇を続け、当該関税発効から約半年後の1987年10月初旬には株価はむしろ過熱気味となっていました。しかし、1987年10月19日に発生したブラックマンデー(ダウ平均22.6%の史上最大の単日暴落)では、米国の双子の赤字(財政赤字・貿易赤字)拡大や金利上昇懸念とともに、貿易摩擦の激化も背景要因の一つと指摘されています。つまり半年後に世界的株価暴落が起きたものの、それは報復関税合戦単独の影響ではなく、複合要因によるものでした。ブラックマンデー後、米国株は比較的早期に持ち直しましたが、1987年後半は貿易問題への警戒もあって乱高下が続きました。

株価への影響(日本)

日本では、1987年の米国の制裁関税発表を受けて電機・精密株が下落し、日経平均も一時売られました。しかし、日本側が対抗措置を取らなかったことや、制裁対象が限定的だったことから日本株全体への影響は一過性でした。日経平均は1987年春から夏にかけて最高値を更新し続けました。ただし、同年10月の米国発の株価暴落時には日経平均も急落(10月20日に日経平均▼14.9%)しました。もっとも日本株はその後迅速に回復し、半年後の1988年前半にはバブル景気に乗って再び上昇基調に戻りました。総じて、日米摩擦による1987年の株価影響は短期的な動揺に留まり、日経平均は半年後には回復しています。

1990年代:米EU「バナナ戦争」

背景(米国 vs. EU)

1993年、欧州連合(EU)は自域の旧植民地の小規模農家を保護する目的で、ラテンアメリカ産バナナに高関税を課す輸入枠制度を導入しました。しかし、ラテンアメリカのバナナ農園の多くは米国企業(例:チキータ社など)が所有していたため、米国はこれを不公正貿易とみなしWTOに提訴します。WTOは一貫してEUに不利な裁定を下しましたが、EUは制度をなかなか是正しませんでした。そこで米国は1997年以降段階的にEU産品に対する100%報復関税(スコットランド製カシミヤやフランスのチーズなどに対し)を発動し、EUも対抗措置を検討するという**「バナナ戦争」**に発展しました。この紛争は長期化し、最終的に2009年にジュネーブ協定(EUが段階的に関税を引き下げることで合意)が結ばれて終結しました。

株価への影響(米国)

バナナ戦争は農産品・一部贅沢品を巡る限定的な摩擦であり、米国の主要株価指数への影響はほぼ見られませんでした。1990年代後半の米国株式市場はITバブルに向け上昇基調にあったため、この問題による調整は限定的でした。ただし、制裁関税の対象となった特定業界(欧州産高級品を扱う企業など)では影響があった可能性があります。例えば、関税対象となったフランス産チーズや英国産織物などを輸入販売していた米国企業はコスト増となりましたが、市場全体から見れば微小な部分でした。したがって、半年後までに米国株式市場はむしろ別要因(IT企業の業績など)に左右され上昇を続け、バナナ戦争による目立った下落や景気への悪影響は認められませんでした。

株価への影響(日本)

この紛争は米EU間の問題であるため、日本市場への直接的影響はありませんでした。1997~1999年当時、日本は金融危機やデフレ不況で株式市場が低迷していましたが、それらは主に国内要因によるものです。バナナ戦争が日本企業や株価に与えた影響は事実上ゼロと言えます。もっとも、紛争の長期化はWTO体制への不信感を招き、自由貿易に依存する日本経済にも間接的には好ましくない状況でしたが、市場は個別の関税措置には反応しませんでした。

2002年:米欧「鉄鋼関税」を巡る応酬

背景(米国 vs. EU・日本他)

2002年3月、米国ブッシュ大統領は国内鉄鋼産業保護のため、主要な鉄鋼製品に8~30%の追加関税(緊急セーフガード)を発動しました。カナダやメキシコなどFTA加盟国は対象外とされましたが、日本やEU、中国など幅広い国からの輸入鉄鋼が対象となりました。これに対しEUや日本などはWTO提訴するとともに、報復関税リストを準備しました。EUはフロリダ産のオレンジジュースやハーレーダビッドソンのバイクなど22億ドル相当の商品に制裁関税を課す用意を表明し、日本も4.9億ドル相当の米国製鉄鋼製品に最大100%関税を課すと警告しました。WTOでもこの米鉄鋼関税は違反と判断され、各国の報復圧力に直面した米国は2003年12月に関税を撤回しました。

株価への影響(米国)

鉄鋼関税発表直後、米国株式市場は「貿易戦争」懸念から一時的に下落しました。2002年3月初旬の発表時、ダウ平均は前日比-1.5%程度下落し、ボーイングやキャタピラーといった製造業株も売られました。当時はドットコム崩壊後の弱気相場でもあり、貿易摩擦の影響が悲観心理を強めています。しかしその後、関税除外措置(カナダやメキシコの免除)やWTOの裁定見通しが好感され、市場への影響は徐々に織り込み済みとなりました。半年後(2002年9月)には米国株式市場は別要因もあり更に下落していましたが、これは主に会計不信や景気後退懸念によるもので、鉄鋼関税自体の直接の影響は限定的でした。実際、**市場全体では「一時的な動揺(wobble)に留まり、短期間で落ち着いた」**と分析されています。ブッシュ政権が比較的早期に関税を撤回したこともあり、2003年には株式市場は持ち直しに転じました。

株価への影響(日本)

日本でも2002年の米鉄鋼関税に対し抗議しましたが、報復関税の実施は見送りました。しかし日本の鉄鋼メーカー株は米市場閉鎖懸念から一時売られ、日経平均も発表直後に下落しています。もっとも、日本株全体は当時不良債権問題など内憂が大きく、米国の関税措置による影響は相対的に小さくなりました。半年後の2002年秋には日経平均はバブル後最安値圏まで低下していましたが、これは国内金融システム不安が主要因であり、鉄鋼関税の影響は軽微です。結果として、日本市場への波及は限定的で、関税撤回後は鉄鋼株も回復しました。

2018年:トランプ政権の関税政策と世界的貿易戦争

米中貿易戦争の勃発

背景(米国 vs. 中国)

2018年、トランプ政権は巨額の対中貿易赤字是正と知的財産侵害是正を名目に、一連の対中関税措置を発動しました。1月には洗濯機・太陽光パネルに追加関税を課し、3月には米通商法301条調査に基づき中国からの輸入品に制裁関税を課す方針を発表しました。7月6日、まず中国からの500億ドル相当の輸入品に25%関税(第1弾)が発動され、中国も同額の米国輸入品(大豆・航空機など)へ報復関税を課しました。以降も米国は第2弾・第3弾と関税対象を拡大し、2019年までに総額2500億ドル超の中国製品に関税を発動。中国も米国からのほぼ全輸入品に対し対抗関税を科し、米中貿易戦争が本格化しました。緊張は2019年5月に一時頂点に達し、互いにさらなる関税引き上げを宣言し合いましたが、同年末に部分合意(2020年1月の「第1段階合意」)に至り追加関税は一時停止しました。

株価への影響(米国)

米中の関税合戦は株式市場に大きなボラティリティ(変動)をもたらしました。発表や報復のたびに投資家心理が揺れ、発表日には米国株が急落する局面が度々生じました。例えば、2018年3月22日にトランプ政権が対中制裁関税を表明した際、翌日のダウ平均は約425ドル急落しました。また、中国が報復関税リストを発表した2018年4月には、ダウ平均が日中に700ドル超下落する場面もありました(終値では下げ幅圧縮)。4~5月にかけ追加関税の応酬懸念でS&P500は調整局面に入り、ナスダックも乱高下しました。しかしその後、米中交渉期待から夏場には株価は持ち直し、2018年9月にはS&P500が過去最高値を更新する展開となりました。

ところが、半年後の2018年末、米中交渉の難航や追加関税発動(9月第3弾)、加えて米国利上げなどが重なり、株式市場は再度急落しました。S&P500は10-12月に20%近い下落となり(弱気相場入り寸前)、ダウ平均も2018年年間で▲5.6%と7年ぶりの下落で終えました。しかし、2019年にはFRBの利下げ転換や貿易協議進展を受けて株価は急回復し、S&P500は年間+28%の大幅高となって史上最高値を更新しています。総じて、米中関税発動後半年間は大きな下げ局面があり変動率も高かったものの、1年程度で見れば政策対応もあって株価は回復しました。

株価への影響(日本)

米中貿易戦争は世界的なサプライチェーンに影響したため、日本の株式市場も敏感に反応しました。米国が対中関税を発表した2018年3月下旬、日経平均は一時1,500円超の急落を記録し、4月初旬にも中国の報復関税発表を受けて日経平均が▼3%前後下落する場面がありました(自動車・電子部品など対中輸出企業中心に売られた)。もっとも春先には一旦落ち着きを取り戻し、日経平均は6月~9月にかけて22,000~24,000円台へ持ち直しています。しかし、米国市場と同様に半年後の2018年末に日経平均は急落しました。特に12月には**一時20,000円割れ(年間高値から20%以上安)**となり、景気後退懸念が強まりました。これは米中摩擦長期化により世界経済の減速懸念が高まったためです。ただし2019年には状況が改善し、日経平均も米株高や円安基調を追い風に反発、半年程度で2018年秋の水準を回復しました。総括すると、日本市場も米中貿易戦争で大きく乱高下し、発表後半年間は弱含みでしたが、その後は回復に向かったと言えます。

米国と同盟国(EU・日本など)との関税応酬

背景(米国 vs. EU・日本・加墨)

トランプ政権は中国だけでなく、同盟国にも関税措置を講じました。2018年3月、国家安全保障を理由に全世界対象の鉄鋼(25%)・アルミ(10%)追加関税を発表し、当初一時的に加・墨・EU等を除外したものの、6月1日以降それら同盟国にも適用しました。これに対しEUはただちに報復措置をとり、同年6月にアメリカ製品(バーボンウイスキー、ジーンズ、オートバイ〈ハーレー〉など)に対し25%の報復関税を発動しました。カナダも米国産製品126億カナダドル分に同等の関税を課し、メキシコも米国産豚肉や果物に報復関税を課しました。日本は鉄鋼関税の適用除外を求めましたが認められず、独自報復は控えつつWTO提訴という対応を取りました。さらにトランプ大統領は自動車への25%関税も示唆し、これは特に日本やドイツに大きな脅威となりました(※最終的に自動車関税は発動されず)。

株価への影響(米国)

2018年3月1日の鉄鋼関税方針表明直後、ダウ平均は▼420ドルと急落し、キャタピラーやボーイングなど多国籍製造業株が売られました。また、このニュースを受けて翌日の世界市場もリスクオフとなり、日経平均は翌日▼2.4%下落するなど波及しました。ただ、米国市場はその後すぐに反発し、関税自体よりも米中交渉や米金融政策への関心が上回るようになります。EUの報復関税が実施された6月下旬にも、一部米企業(報復対象となったハーレー社など)の株価下落やコスト増警戒はありましたが、米株全体への影響は限定的で、2018年7~9月には市場は安定して上昇しました。しかし、同盟国との関税摩擦が世界景気に与える不安は常に残り、2018年後半の株価下落局面ではこれも重石となりました。半年後までに見ると、一時的な下落はあったものの、米市場は関税措置を比較的速やかに消化し回復基調を維持したと言えます。

株価への影響(日本)

日本にとって米国の鉄鋼・アルミ関税適用や自動車関税の脅威は深刻な懸念材料でした。2018年3月の発表時、前述の通り日経平均は急落し、自動車株も軒並み売られました。その後、自動車関税が先送りされるとの見方が広がると自動車セクターは持ち直しました。しかし半年後の2018年秋まで、貿易問題への不安は日本株の上値を抑える要因となり続けました。例えば、メキシコ向け生産比率の高い部品メーカーや、欧州向けバイクを製造するメーカーなどは報復関税の影響を受け、株価低迷が長引きました。また円高リスクも高まりやすくなり、輸出株全般に逆風でした。ただし、2019年に入ると米国が同盟国との貿易交渉(USMCA締結や対日交渉)で一定の合意を見せ、自動車関税も回避されたため、日本株市場も安心感から反発しました。結局、日本市場は発表直後に下落したものの、その後半年間で徐々に落ち着きを取り戻し、翌年には貿易摩擦前の水準を回復しました。

主要事例の一覧表(発動日と市場影響)

年代(事例)発動・発表日当事国・背景米国株式市場への影響日本株式市場への影響
1930年:スムート・ホーリー関税法1930年6月17日(署名)米国(世界恐慌下で関税大幅引上げ)⇔ カナダ・欧州など25か国以上が報復関税ダウ平均は署名週に急落し暴落状態。半年後も下落継続(回復せず)。日本の主力輸出品(生糸など)に打撃。株式市場も低迷し半年後も回復せず(世界恐慌の波及)。
1962–64年:チキン戦争1962年(EEC鶏肉関税)<br>1963年12月(米国報復関税発表)EEC(仏独伊などが米国産鶏肉に関税)⇔ 米国(鶏肉報復:デンプン・ブランデー・トラックに関税)発表直後でも株式指数への影響軽微。関連銘柄は調整も、市場全体は堅調。半年後も株価上昇継続(景気拡大に支え)。**影響ほぼ無し。**高度成長期で日経平均は上昇基調。貿易摩擦の直接的波及見られず。
1987年:日米半導体摩擦1987年3月27日(米制裁表明)米国(半導体協定不履行として100%関税制裁)⇔ 日本(報復措置せず、WTO提訴検討)エレクトロニクス株に売りも株式指数への影響限定的。半年後の1987年10月にブラックマンデー(複合要因で暴落)も、その後短期で回復。電機株が一時下落し日経平均も調整。しかし影響は一過性で、その後バブル的上昇継続。ブラックマンデーで急落も迅速に回復。
1993–2001年:バナナ戦争1993年7月1日(EUバナナ規制)<br>1999年4月19日(米100%関税)EU(旧植民地保護でバナナ高関税)⇔ 米国(WTO提訴・100%関税で報復)関税対象が限定的で市場全体への影響なし。IT景気下で株価はむしろ上昇基調を維持。半年後も変わらず強気相場。**影響なし。**日本市場の動きは国内要因に左右され、バナナ戦争による変動は皆無。
2002年:米欧鉄鋼関税摩擦2002年3月5日(米輸入鉄鋼関税)<br>2003年6月(EU制裁目前)米国(鉄鋼に8~30%保護関税)⇔ EU・日本他(WTO提訴・報復関税リスト準備)発表直後に株価一時急落(ダウ▼1.5%程度)もその後落ち着く。半年後は他要因で株安続くが関税影響は限定的。発表直後に日経平均下落。鉄鋼株安も影響小幅。半年後、日本株は金融危機要因で安値圏(関税影響の識別困難)。
2018年:米中貿易戦争2018年3月22日(米対中関税表明)<br>2018年7月6日(第1弾発動)米国(知財侵害是正で制裁関税第1弾~第3弾)⇔ 中国(大豆等に同規模

年代(事例)発動・発表日当事国・背景米国株式市場への影響日本株式市場への影響
1930年:スムート・ホーリー関税法1930年6月17日(署名)米国(世界恐慌下で関税大幅引上げ) ⇔ カナダ・欧州など25か国以上が報復関税ダウ平均は署名週に急落し暴落状態。半年後も下落継続(回復せず)。日本の主力輸出品(生糸など)に打撃。株式市場も低迷し半年後も回復せず(世界恐慌の波及)。
1962–64年:チキン戦争1962年(EEC鶏肉関税) 1963年12月(米国報復関税発表)EEC(仏独伊などが米国産鶏肉に関税) ⇔ 米国(鶏肉報復:デンプン・ブランデー・トラックに関税)発表直後でも株式指数への影響軽微。関連銘柄は調整も、市場全体は堅調。半年後も株価上昇継続(景気拡大に支え)**影響ほぼ無し。**高度成長期で日経平均は上昇基調。貿易摩擦の直接的波及見られず。
1987年:日米半導体摩擦1987年3月27日(米制裁表明)米国(半導体協定不履行として100%関税制裁) ⇔ 日本(報復措置せず、WTO提訴検討)エレクトロニクス株に売りも株式指数への影響限定的。半年後の1987年10月にブラックマンデー(複合要因で暴落)も、その後短期で回復。電機株が一時下落し日経平均も調整。しかし影響は一過性で、その後バブル的上昇継続。ブラックマンデーで急落も迅速に回復。
1993–2001年:バナナ戦争1993年7月1日(EUバナナ規制) 1999年4月19日(米100%関税)EU(旧植民地保護でバナナ高関税) ⇔ 米国(WTO提訴・100%関税で報復)関税対象が限定的で市場全体への影響なし。IT景気下で株価はむしろ上昇基調を維持。半年後も変わらず強気相場。**影響なし。**日本市場の動きは国内要因に左右され、バナナ戦争による変動は皆無。
2002年:米欧鉄鋼関税摩擦2002年3月5日(米輸入鉄鋼関税) 2003年6月(EU制裁目前)米国(鉄鋼に8~30%保護関税) ⇔ EU・日本他(WTO提訴・報復関税リスト準備)発表直後に株価一時急落(ダウ▼1.5%程度)もその後落ち着く。半年後は他要因で株安続くが関税影響は限定的。発表直後に日経平均下落。鉄鋼株安も影響小幅。半年後、日本株は金融危機要因で安値圏(関税影響の識別困難)。
2018年:米中貿易戦争2018年3月22日(米対中関税表明) 2018年7月6日(第1弾発動)米国(知財侵害是正で制裁関税第1弾~第3弾) ⇔ 中国(大豆等に同規模報復、第4弾まで応酬)発表の度に乱高下。初期にS&P調整局面、ダウ▲425ドルの日も半年後の2018年末にかけ▲20%近い急落。ただ翌半年で大幅反発し1年以内に回復。発表直後に急落(日経▼1500円超の場面)。夏場持ち直すも、半年後の12月に▼20%超の急落。2019年に米株高で回復。**変動激しく、1年で回復。
2018年:対EU・同盟国関税2018年3月1日(米鉄鋼関税表明) 2018年6月1日(EU等適用開始)米国(鉄鋼25%・アルミ10%、自動車関税示唆) ⇔ EU・加・墨・日本(報復関税・交渉)発表直後に下落(ダウ▼420)も、影響は一時的。EU報復時も一部株安あるも市場全体は堅調維持。半年後までに初期下落を回復。発表直後に日経▼2.4%。自動車株など弱含みも、関税先送りで持ち直し。半年後まで上値重いが概ね安定推移し、翌年回復。

※指数変動は主要な瞬間値・概算で記載。%は期間中の高安変動幅の目安です。