東京証券取引所におけるスタンダード市場への市場区分の変更ガイド
東京証券取引所におけるスタンダード市場への市場区分の変更ガイド
はじめに
東京証券取引所(TSE)は、2025年3月1日から上場維持基準の経過措置を順次終了し、以後到来する基準日から本来の上場維持基準を適用することを発表しました。本ガイドは、スタンダード市場への市場区分の変更を検討されるプライム市場・グロース市場の上場会社の皆様を対象として、手続きの流れや審査基準の概要について案内するものです。
市場区分の変更審査を受ける場合には、原則、申請の6か月前までを目途に相談窓口までご一報いただくようお願いしています。相談窓口では、本資料の詳細についてのご説明のほか、個別のご相談も随時受け付けております。
1. 市場区分の変更手続きの流れ
スタンダード市場への市場区分の変更を行うにあたっては、当取引所が行う「市場区分の変更審査」を受け、審査基準に適合する必要があります。
モデルスケジュール(3月期決算の場合)
タイムライン | プロセス |
直前期(2025年3月期) | 経過措置の適用 |
申請期(2026年3月期) | 改善期間 |
ステップ1 | スケジュールの検討 |
ステップ2 | 相談窓口への連絡 |
ステップ3 | 申請書類準備 |
ステップ4 | 市場区分の変更審査 |
最終ステップ | 市場区分の変更 |
まずは、上場維持基準に係る改善期間がいつまでかをご確認いただき、市場区分の変更審査に向けたスケジュール(いつから具体的な準備を始めるか、いつ審査を受けるか)をご検討ください。
遅くとも改善期間の末日までには、当取引所に市場区分の変更審査のご申請を行っていただきますよう、お願いいたします。
2. 審査基準
スタンダード市場の形式基準
市場区分の変更には下表の形式基準を全て満たす必要があり、その算定方法等は上場維持基準と一部異なります:
項目 | 基準 | 算出方法等 |
株主数 | 400人以上 | 直前の基準日等に1単位以上所有する株主数 |
流通株式数 | 2,000単位以上 | 直前の基準日等の発行済株式総数から流通性の乏しい株券等の数を合算した数を減じた数 |
流通株式時価総額 | 10億円以上 | (公募・売出しを実施しない場合)「流通株式数」に「上場承認日の2営業日前の日以前1か月間における最低価格」を乗じて算出 |
流通株式比率 | 25%以上 | 流通株式数を発行済株式総数で除して算出 |
利益の額 | 最近1年間の利益の額 1億円以上 | 「最近」の起算は基準事業年度の末日からさかのぼる<br>「利益の額」は原則として経常利益ベース |
純資産の額 | 正 | 半期報告書を提出している会社については、直前中間会計期間の末日における純資産の額 |
注意: 「利益の額」の基準は上場維持基準にはないため、ご留意ください。
スタンダード市場の実質基準
実質基準は以下の5つの項目から構成されますが、上場会社としての実績を踏まえて効率的な審査が可能な場合には、「①企業の継続性及び収益性」を中心に審査し、②~⑤は適合しているものとして扱います。
実質基準 | 内容 |
①企業の継続性及び収益性 | 継続的に事業を営み、かつ、安定的な事業基盤を有していること |
②企業経営の健全性 | 事業を公正かつ忠実に遂行していること |
③企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性 | コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること |
④企業内容等の開示の適正性 | 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること |
⑤その他公益又は投資者保護の観点から当取引所が必要と認める事項 | - |
企業の継続性及び収益性の審査について
この基準においては、申請会社の企業グループの経営活動(仕入、生産、販売等)が、市場区分の変更後も安定的に行われるかどうかを実態面から確認します。例えば製造業では:
また、この基準においては、申請会社の本業における収益性を確認するという考えから、確認対象とする「利益」は原則として経常利益とします。「今後」(上場後一定の期間)とは、申請事業年度を含む2期間を想定しています。
実際の審査では、申請会社の企業グループにおける業績が安定的又は増益基調で推移している場合、事業計画が適切に策定されているかどうかの観点を中心に審査を行います。
3. よくあるご質問
Q1: スタンダード市場への市場区分の変更にあたっては、主幹事証券会社による上場適格性調査を受けることが必要なのでしょうか?
A: 任意です。スタンダード市場への市場区分の変更については、上場会社単独での準備・申請が可能です。また、上場適格性調査を受けないことが変更審査において不利に働くことはありません。
Q2: Ⅱの部作成やその他提出書類等の準備を依頼できる機関はあるのでしょうか?
A: 市場変更を準備している会社の中には、証券印刷会社やIPOコンサル等を活用しているケースがあります。
Q3: スタンダード市場への市場区分の変更申請を行う際に、開示済みの「上場維持基準の適合に向けた計画」に関して何らか対応を行う必要はありますか?
A: 市場区分の変更承認日に、「(プライム市場またはグロース市場の)上場維持基準の適合に向けた計画」を取り下げる旨の開示を行っていただきますようお願いします(内容調整のため、事前に当取引所の開示担当者に開示文書のドラフトをご送付ください)。なお、当該開示においては、市場区分の変更理由や、「上場維持基準の適合に向けた計画」において記載していた各種取組みに係る今後の対応方針についても記載いただくことが考えられます。
Q4: グロース市場からスタンダード市場への市場区分の変更を行うにあたり、コーポレートガバナンス・コードの全原則適用に向けた対応はどのように進めれば良いでしょうか?
A: スタンダード市場の上場会社には、コーポレートガバナンス・コードの全原則が適用されます。全原則適用に伴う実務対応については、「コーポレートガバナンス・コードの全原則適用に係る対応について」にてご案内を行っておりますので、ぜひご確認ください。
Q5: グロース市場からスタンダード市場への市場区分の変更を行うにあたり、「資本コストや株価を意識した経営の実現」に向けた対応を行う必要はありますか?
A: 当取引所は2023年3月31日に、プライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象として、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について要請を行っています。グロース市場から市場区分の変更を行った場合にも、投資者の期待を踏まえ、積極的な対応をご検討ください。
参考:経過措置の終了時期
2025年3月1日以後に到来する上場維持基準に関する基準日から、本来の上場維持基準を適用:
ただし、本改正規則の施行日の前日(2023年3月31日)において、2026年3月1日以後最初に到来する基準日を超える時期を終了期限とする計画を開示している会社については、改善期間の終了後に監理銘柄に指定し、当該終了期限における適合状況を確認するまでの間、その指定を継続します。