ROAとROICの違いをわかりやすく解説
はじめに
企業の収益性や効率性を評価する上で、ROA(総資産利益率)とROIC(投下資本利益率)は重要な指標です。どちらも企業がどれだけ効率的に資本を活用して利益を生み出しているかを示しますが、その計算方法や意味合いには重要な違いがあります。この記事では、仮想企業A社のデータを例に、これらの指標の違いをわかりやすく解説します。
仮想企業A社の財務データ
まずは、分析に使用するA社の財務データを確認しましょう。
項目 | 金額(億円) |
売上高 | 1,000 |
営業利益 | 100 |
税率(法人税等) | 30% |
当期純利益 | 70 |
総資産(Total Assets) | 2,000 |
有利子負債 | 500 |
現金等(非事業資産) | 200 |
株主資本(自己資本) | 1,300 |
ROA(総資産利益率)とは
ROA(Return on Assets)は、企業が保有するすべての資産をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示す指標です。
ROAの計算式
A社のROA計算例
ROAの解釈
A社の場合、総資産に対して3.5%の利益を生み出しています。つまり、保有している資産100円あたり3.5円の利益を生み出していることになります。この指標は会社が所有するすべての資産(現金や投資など含む)をどれだけ効率的に活用しているかを示しています。
ROIC(投下資本利益率)とは
ROIC(Return on Invested Capital)は、事業に実際に投下されている資本に対する収益性を測定します。ROAと異なり、事業に直接関係ない資産(余剰現金など)を除外するため、より純粋な事業効率を評価できます。
ROICの計算ステップ
ステップ1: 税引後営業利益(NOPAT)を求める
NOPAT(Net Operating Profit After Tax)は、税引後の営業利益を表します。
A社の場合:
ステップ2: 投下資本を求める
投下資本は、事業に実際に使われている資本の額です。
A社の場合:
ステップ3: ROICを計算する
A社の場合:
ROICの解釈
A社は事業に実際に使用している資本に対して約3.89%の利益を生み出しています。これは、事業活動に直接投入されている資本がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示しています。
ROAとROICの違い:比較表
指標 | 計算式 | A社の結果 | 意味 | 特徴 |
ROA | 当期純利益 ÷ 総資産 | 3.5% | 企業全体の資産を使ってどれだけ利益を生んだか | すべての資産(現金含む)を評価対象とする |
ROIC | NOPAT ÷ 投下資本 | 3.89% | 事業に使っているお金に対してどれだけ効率的に稼いだか | 事業に直接関係する資本のみを評価対象とする |
ROAとROICの主要な違い
重要ポイント
どちらの指標を使うべきか?
両指標にはそれぞれ長所があり、分析目的によって使い分けることが重要です。
実務では、単一の指標だけでなく複数の指標を組み合わせて総合的に分析することが重要です。また、同業他社との比較や、時系列での変化を追うことで、より有意義な分析が可能になります。