5532 リアルゲイト 初回レポート
証券コード5532 リアルゲイトについて、今期及び来期にわたる業績予想について紹介する。同社は2009年8月にプロパティマネジメント事業で創業し、2023年6月に東証グロース市場に上場している。競争力を失った築古ビルに対して抜本的な改良を施し、フレキシブルなワークプレイス(FWP)として提供することで、不動産に付加価値を付与し収益性を向上させるFWP事業を単一セグメントとして展開。創業以来、収益モデルを追加し続けており、現在は主にプロパティマネジメント(PM)、マスターリース(ML)、再生物件保有(保有)、設計・施工、物件売却の5つの主要な収益モデルを展開している。同社の特徴は、技術力・企画力・運営力によって築古ビルを適正価格で安心・安全な収益性の高いビルに再生することに加え、都心部の特定エリア(特に渋谷区、港区、目黒区)に集中的に展開するドミナント戦略を取ることが挙げられる。
リアルゲイトのFWP事業は、主に5つの収益モデルから構成されている。これらの事業は、継続性・安定性の高いストック型収入であるプロパティマネジメント(PM)、マスターリース(ML)、再生物件保有(保有)と、スポットで発生するフロー型収入である設計・施工、物件売却に分類される。
各事業は以下の通りである。
MLは、ビルオーナーより10年~15年程度の契約で建物を一括で賃借し、エンドテナントに転貸することで収益を得る事業である。エンドテナントへの賃料収入から、ビルオーナーへの賃料支払いや運営経費を差し引いた分が収益となる。開業初期は支払家賃が先行するため赤字が先行する傾向があるが、満室稼働後は安定収入を得られる。リースアップ後は高い粗利を得ることが可能であり、粗利率は25%程度である。PMや保有と比べて粗利率は中程度だが、ストック型収入の基盤として重要視されており、保有と並んで新規獲得が強化されている。
PMは、ビルオーナーから物件の企画や運営業務を受託し、収益を得る事業である。収益源は主にテナントからの賃料収入に対して一定の手数料等を得ることであり、粗利率は8%程度である。物件の引渡しを受けてから完成するまでの間は設計・施工売上が計上されるが、完成後のリーシング初期には、新規契約ごとに発生する契約手数料が収益源となる。空室が多いほど新規契約が多くなるため、この契約手数料はリーシング初期に多く発生し、満室に近づくにつれて減少する。しかし、これはPM収益全体の一部であり、リースアップ後には安定的なPMフィーや運営フィーが主な収益源となる。ML契約の物件とは異なり、竣工直後から利益をあげることが可能であるが、現在同社は社員の採用費や人件費が高い状況下で社員数を増やさずにいかに利益を上げるかに注力しているため、比較的収益性の低いPMは縮小していく方針を示している。
設計・施工は、設計監理契約や工事請負契約を締結し、物件完成時に工事収入等を得る事業である。PMやML事業に附随して発生する特徴があり、完成時に売上が計上されるフロー型収入である。建築資材や人件費の高騰により建築費は上昇トレンドが続いており、これは新築への建て替えが困難なオーナーを増やし、リノベーションのニーズを高めるため、同社にとっては追い風となる市場環境である。
再生物件保有は、同社自らが物件を取得し、リノベーション等でバリューアップを行った上で、賃料収入を得る事業である。PM、ML、保有の中で最も収益性が高く、粗利率は65%程度である。物件取得費用が先行して発生するが、竣工後は極めて高い粗利を収受できる。PMやMLと同様にストック型収入に分類される。財務状況との兼ね合いやポートフォリオ入れ替えのために物件を売却することもあるが、売却後も売却先とML、PM契約を締結することで、ストック収入に繋げることができる。MLと並んで新規獲得が強化されており、保有物件の増加は来期以降の成長を加速させる重要な要素である。
物件売却は、同社が保有する物件を売却することで収益を得る事業である。財務状況の改善に寄与するとともに、売却後もMLやPM契約を受託することで安定的なストック収入に繋げる戦略的な意味合いもある。
上記が今回行った業績予想である。
今回の業績予想は、都心部における築古ビル再生を軸としたFWP事業の拡大を前提とするものである。特に、収益性の高い保有物件やML物件の増加、そして同社が持つ企画力・技術力・運営力を活かした不動産価値の最大化が成長の鍵となる。
同社は、営業利益で年率30%以上の継続的な成長を目指しており、中期経営計画では2027年9月期に営業利益17億円、2031年9月期には50億円という具体的な目標を掲げている。この高い成長目標を達成するため、積極的な物件獲得、ML物件から保有物件への転換、そして保有物件のポートフォリオ戦略といった成長戦略を推進する。
成長の基盤となる新規物件の獲得は年間7-8件を目標に積極的に進めており、限られた人員リソースを最大限に活かすため単純な物件数の増加よりも優良な物件や利益額が高い物件の獲得を重視する。また、特定のエリアに集中して物件を取得するドミナント戦略も推進し、エリア内での競争優位性を高める方針である。
既存のML物件を保有物件として取得・運営する戦略は、重要な成長ドライバーである。この転換には、物件取得費用、借入金増加に伴う利息、建物の減価償却費といった先行投資が伴い、短期的には営業利益を圧迫する可能性がある。例えば、借入金で物件を取得する場合、営業費用に計上される借入利息の増加や自己資本比率の低下を招く。また、物件取得後は本格的な営業開始前であっても減価償却費が計上され、費用増加の一因となる。しかし、中長期的には大きなリターンが見込める。具体例として、25/2QにOMB北参道とOMB東麻布の2物件はML契約から保有への切り替えが行われ、今期は購入関連費用が発生するためML契約時と比較して収益貢献に大きな変化はないが、来期以降は保有物件として運営されることで収益性が大幅に向上し、業績に大きく貢献する見込みである。加えてMLの地代家賃上昇分が適切に賃料へ転嫁されていることも確認できる。(上図参照)
保有物件については、個々の物件特性や全体の財務バランスを総合的に考慮し、ポートフォリオの入れ替えを適宜行っていく方針である。2025年4月時点で、保有物件全体の満室時年間想定賃料は8億円に相当し、これを表面利回り5%で換算すると160億円以上の価値になる可能性がある(もちろん全ての物件をすぐに売却できるわけではない・換算額で売れることは保証されいていない点には留意が必要・また有利子負債が約100億円ある点にも留意が必要)。しかし、同社はこれら全ての物件を一度に売却するのではなく、毎年2棟から3棟を計画的に取得・売却することで、着実な成長を目指す方針である。一時的なキャピタルゲインによる単年度の爆発的な利益獲得を目標とはしておらず、売却後もML契約やPM契約を継続することで、安定的なストック収入を確保するスキームを構築している。
売上原価は、フロー型売上に連動する販売用不動産の仕入れ原価や外注費、地帯家賃が中心である。25年1Qのフロー型売上総利益は、新築物件の土地のみを先行売却したため、通常の中古ビル売却と比較して低くなっている。通常新築事業の利益率は約20%だが、中古物件では仕入れ価格により最大40%程度になることもある。販管費は、管理部門の人件費や本社家賃などで構成され、一定水準で推移する見込みだが、従業員のベースアップ(5~10%程度検討)により人件費は増加傾向にある。その他費用として、CFを優先し新築物件の土地を先行売却する稀なケースでは、25年1Qのように関連税金が一時的に計上されることがある。
事業環境としては、まず不動産市況において建築費の動向が注視される。建築資材高騰や人手不足などを背景に、建築費は高止まりが続くと予想される。円安は輸入資材価格の高騰を通じて建築費上昇の一因となっていたが、仮に円高に振れた場合は、建築費の上昇がある程度抑制される可能性がある。この建築費高騰は、新築建替えの採算悪化を招き、結果として既存建物の賃貸やリノベーションを検討するオーナーが増加するという、同社にとって追い風となる状況を生み出しており、従来競合関係にあった新築開発業者に対して優位性を確保しやすく、賃料への価格転嫁(5-10%)も進んでいる。また、新築開発から中古ビル市場へ参入する企業が増加しており、これは競争激化を意味する一方、同社が保有する築古ビルの取引価格上昇にも繋がるためプラスの側面も持ち合わせている。
金利上昇の影響については、借入金が存在するため、金利上昇は既存物件や新規物件取得のための借入に対する利息を増加させ経常利益や当期純利益にマイナス影響を与える可能性があるが、金利上昇は新築の建築費用をさらに増加させるため新築開発が減少し、結果としてオーナーがリノベーションを選択する傾向が強まるというプラスの影響も期待できる。
また海外投資家の動向も考慮すべき点である。円安の局面では、海外の不動産投資プレイヤーの日本市場への参入が活発化し、市場の過熱感を招く一因となった。逆に円高に転じた場合は、これらのプレイヤーが投資資金を引き揚げ、保有する国内不動産の売却を増やす可能性があり、不動産価格が抑制される方向に働くことも考えられる。
以上の予想と会社予想、四季報予想、コンセンサスとの比較を以下に示す。
我々の予想では2025年9月期の予想は売上高、営業利益ともに会社予想、四季報予想と同等の水準となった。
同社の収益は、安定的なストック型と、タイミングによって変動するフロー型に分けられる。フロー型収入は設計・施工の完了時期や物件売却のタイミングに左右されるため、四半期ごとに偏りが生じる傾向がある。ストック型収入は竣工時期やテナント誘致の進捗によって利益が出る時期に差が出る。また財務戦略については、現在は事業拡大のための投資フェーズであるため配当の予定はないが、当期純利益が10億円を超えて安定的に推移し始めた段階(営業利益で15億円程度)で配当を検討する考えである。自己資本比率は物件取得などにより変動するが,ポートフォリオの入れ替えなどを通じて調整し、15%前後を想定している。また、将来的な物件購入資金の調達手段として、公募増資のリスクがあることに留意が必要。
投資判断を下す際にはこのような点を踏まえた上で慎重に判断する必要があるだろう。