日本のデジタルカメラ関連銘柄 投資レポート(2025年)
日本のデジタルカメラ5月出荷状況と関連銘柄
はじめに
5月のデジタルカメラ出荷数量は前年同月比+22.6%
税率引き上げを睨んだ前倒し出荷の可能性もあるが、米州向け出荷数量は同+15.5%。
日本勢では、カシオ計算機が2018年にデジカメ事業撤退、オリンパスも2020年にカメラ事業を日本産業パートナーズへ売却。現在、キヤノン、ニコン、ソニーの3社が交換レンズ式カメラ市場で国内「3強」。これに富士フイルム(ミラーレス・チェキ)やパナソニック(LUMIX)、リコー(PENTAX・GR)などが続く構図。
完成品メーカーに加え、交換レンズ専業メーカー(タムロン、ケンコー・トキナー、シグマ等)、CMOSセンサーや画像処理エンジン開発の半導体メーカー、周辺機器メーカー(三脚、ストロボ、記録メディア等)、主要部品サプライヤー(シャッター機構、レンズ用モーターなど)が幅広く存在。カメラ産業のバリューチェーンを支える構造。
主要デジタルカメラメーカー(完成品)
キヤノン(7751)
概要・ポジション:世界シェア首位級のカメラメーカー。EOSシリーズ(一眼レフ・ミラーレス)やPowerShot(コンパクト)など幅広いラインナップ。レンズ交換式カメラで長年トップシェア維持。プリンターなど事務機器も含めた総合光学機器メーカー。事業セグメントは「プリンティング」「イメージング(カメラ等)」「メディカル」「インダストリアル」に分割。カメラを含むイメージング事業は売上構成の約21%(2024年)。
カメラ関連業績・指標:ミラーレス「EOS R」シリーズへの移行進展。プロ・ハイアマ向けモデルの販売単価上昇でイメージング事業好調。2025年12月期計画では売上高・利益とも増収増益見通し。AI技術搭載など高付加価値機種が牽引。株価約4,100円、予想PERは約11.5倍、PBRは約1.2倍と適正水準。**配当利回りは約3.9%**と高水準。安定配当と堅実財務が魅力。
今後の見通し・注目点:カメラ市場年間1,000万台を切る水準まで縮小も織り込み、高単価モデルに注力して圧倒的首位を目指す戦略。2023年の世界カメラ出荷額は前年比5%増の7,143億円、平均単価は過去最高の9万円台。プロ・愛好家向けミラーレスやシネマカメラ分野強化、新分野のネットワークカメラ等へ展開。主なリスクはカメラ市場全体の縮小トレンドや競合の技術革新。ただプリンターや医療機器など他事業で補完可能。豊富なキャッシュによる戦略投資余力などで中長期安定感は高い。
ニコン(7731)
概要・ポジション:一眼レフカメラで長年トップクラスのブランド力を持つ老舗光学機器メーカー。現在はZシリーズに代表されるフルサイズ・APS-Cミラーレスカメラへ事業転換中。半導体露光装置(ステッパー)や計測機器も手掛け。映像事業(カメラ・レンズ)は売上の約4割を占める。精機(半導体装置)やヘルスケア事業なども展開。
カメラ関連業績・指標:2019年度はカメラ事業大幅赤字も、Zシリーズへの注力とコスト構造改革で復調。2024年3月期の映像事業売上約2,953億円、営業利益400億円と増収増益達成。2025年3月期も高価格帯モデル「Z8」「Zf」など中高級機好調で上期売上高1,518億円・営業益288億円と前年同期比2桁増。株価1,400円台。**予想PER約16倍、PBR約0.8倍、配当利回り約3.4%**と保守的なバリュエーション。PBRが1倍下回るのは、市場が他事業(露光装置等)の低迷や成長性に慎重なため。
今後の見通し・注目点:映像事業は高付加価値モデルに経営資源集中、シェアより収益重視の戦略が奏功。プロ・ハイアマ層狙いの中高級機と交換レンズ販売拡大により平均単価向上、利益率改善。「選択と集中」戦略によりヒット機種継続投入できるかが注目点。リスクは他部門(露光装置など)の業績悪化がグループ全体の重石となりうる点。2024年には米RED社買収(デジタルシネマ領域強化)で新分野開拓も着手。展開次第では株式市場での再評価余地。
ソニーグループ(6758)
概要・ポジション:エンターテインメントからエレクトロニクスまで多角展開する巨大企業。カメラ分野ではα(アルファ)シリーズのミラーレス機で急成長、キヤノンに次ぐ世界シェア。CMOSイメージセンサーでは世界シェア約50%と断トツ。ニコンや富士フイルムを含む多くのカメラメーカーにセンサー供給。「カメラ完成品メーカー」と「半導体イメージセンサーメーカー」の二面性。デジタルカメラ事業は「エレクトロニクス製品&ソリューション(EP&S)」セグメント、センサー事業は「イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)」セグメントに分割。
カメラ関連業績・指標:連結業績に占めるカメラ製品の売上比率非公表。ゲーム(PlayStation)や金融を除くエレキ部門全体で売上高3兆円規模、デジタルカメラはテレビ・モバイルと並ぶ主要商品群。センサー部門(I&SS)は売上1.5兆円・営業利益3,000億円規模でスマホ向け中心も、カメラ産業向け(民生機・監視・産業用含む)も重要顧客。株価3,600円前後(2024年に1→5の株式分割実施)。**予想PER約24倍、PBR約2.6倍、配当利回り約0.7%**と成長企業らしい指標。エレキからエンタメへの事業転換成功で株価は近年高値圏推移。
今後の見通し・注目点:完成品カメラ事業では「α7シリーズ」をはじめ動画対応力の高さでプロ/映像制作者の支持獲得。引き続き高機能モデルでキヤノンを猛追する構図。ドローン向け小型カメラやVLOGCAM(動画ブロガー向け)など新カテゴリーにも注力。センサー事業ではスマートフォン向け需要動向に加え、自動運転車載カメラや監視・産業用途など新規市場開拓が成長のカギ。投資家にとってはゲーム・映画音楽など他部門の業績も含めて判断必要。**カメラ関連では「センサー世界トップの座を維持できるか」**が最大注目点。サムスン等との競争激化対応で巨額投資継続、設備投資負担が利益圧迫のリスクも。AIや自動運転進展で高性能イメージセンサー需要は中長期拡大見込み。同社の技術力・市場支配力は引き続き強み。
富士フイルムホールディングス(4901)
概要・ポジション:写真フィルム最大手から事業転換。現在は医療機器・医薬品や機能性材料、オフィス機器まで手掛ける多角企業。カメラ関連は「イメージングソリューション」事業に属し、ミラーレスカメラ(Xシリーズ・GFXシリーズ)やインスタントカメラ(チェキ)、写真プリント・サービスなどを展開。スマホ世代にも人気のインスタントカメラ「チェキ」は1998年発売以来ロングセラー、2018年度には世界年間1,000万台販売のヒット製品。2021年末には富士フイルムがデジタルカメラ世界シェア(台数ベース)でソニーを抜き2位浮上とのデータも。
カメラ関連業績・指標:イメージング事業は売上全体の約13%(2022年度)、営業利益では全社の23%を稼ぐ収益源。チェキヒットに加え、高画質ミラーレス(XシリーズのAPS-C機やGFXシリーズの中判センサー機)の評価高く、販売単価・利益率向上に寄与。株価3,000円強。**予想PER約14倍、PBR約1.1倍、配当利回り約2.3%**と堅実水準。医療や半導体材料といった成長事業を抱えるため業績好調。2023年度も7期連続増収増益・過去最高益更新公表(医療・材料部門の伸長による)。カメラ事業単体の売上規模は小さいものの、チェキ好調で収益にしっかり貢献。
今後の見通し・注目点:「Xシリーズ」で培ったカラーサイエンスやデザイン性を武器に独自路線のカメラを展開。動画クリエイター市場参入すべく、2024年には初のシネマカメラ「GFX100の映像制作向けモデル(開発発表)」も予告。チェキもハイブリッド化やスマホ連携などで進化。投資家にとっては、カメラ事業より医療・バイオなど他事業の成長期待で評価される側面が大きいが、イメージング事業の高収益維持は全社業績を下支えする重要ポイント。カメラ市場減少中でもニッチニーズを掘り起こして成功してきた実績から、安定したキャッシュカウと見られる。リスクはチェキ需要がブーム的反動減に転じる可能性やミラーレス機の市場競争激化によるシェア低下。総合力ある同社においてカメラ事業は良い意味で「スパイス」的存在、大きな業績の足を引っ張るリスクは限定的。
パナソニック ホールディングス(6752)
概要・ポジション:白物家電から車載電池まで幅広く展開する電機大手。カメラ事業はその中の一部門。カメラブランド**「LUMIX(ルミックス)」は、オリンパスと協業したマイクロフォーサーズ規格のミラーレス機で知られ、近年は独ライカと提携したフルサイズ機(Lマウント)にも参入。2022年にはライカとの包括提携強化、「L²テクノロジー」**と称する共同開発フレームワークを構築して高画質化技術などを共有。
カメラ関連業績・指標:ルミックス販売台数はピーク時より落ち込むも、動画撮影に強みを持つGHシリーズや、2023年発売のフルサイズ機「LUMIX S5II」など一定の人気機種。売上規模は同社全体(年商8兆円超)の中ではごく僅か。事業会社再編に伴い位置づけも明確に開示されず(おそらくPanasonic Connect傘下の映像機器部門等に属する模様)。株価1,500円前後。予想PER約11倍、PBR約0.8倍と割安水準。配当利回りは約3%台。家電・車載など主力分野の成長が緩慢なことを市場が織り込み、裏を返せば堅実なバリュー株。カメラ事業の業績は非開示ながら、小規模ながら黒字は維持と推測。
今後の見通し・注目点:パナソニックにとってカメラは主要事業ではないものの、ライカとの協業効果や映像クリエイター需要への対応などで一定の存在感。動画撮影志向のユーザーから根強い支持、プロ向け映像機器技術も背景に保有。今後も「動画・Vlog特化」「小型軽量」といった差別化でニッチ市場を狙う戦略が予想。投資観点では、同社株価はEV電池や住宅設備など他事業の材料で動くため、カメラ事業が株価に直接与える影響は限定的。しかしLUMIXブランドの評価向上は企業イメージ向上につながり、ライカ提携による高付加価値商品創出は利益貢献も期待。リスク要因としてはカメラ事業縮小で撤退となれば一時的に減損コストなどが発生し得るが、事業ポートフォリオ全体へのインパクトは小さく、株主にとって大きな懸念材料ではない。
リコー(7752)
概要・ポジション:事務機(複合機・プリンター)最大手の一角。カメラ分野では**「PENTAX」ブランドの一眼レフや「GR」**シリーズの高級コンパクトカメラを手掛け。2011年にHOYA(旧ペンタックス)からカメラ事業を譲り受けた経緯で、伝統のペンタックスブランドを継承。市場シェアは小さく、新規ミラーレス機の投入も行わないため、一眼レフ愛好家やGRファンなど限定された市場が中心。360度カメラ「THETA」は一時注目されたが、現在は競合増加でやや陰が薄い状況。
カメラ関連業績・指標:主力はオフィス向け機器・ITサービス。カメラ事業の売上比率は数%程度と推定。2023年3月期の同社全体売上約2兆円だが、映像事業は非常に小規模で業績開示上も目立たず。株価1,300円台。**予想PER約14倍、PBR約0.75倍、配当利回り約3%**と典型的なバリュー株指標。低PBRは構造改革の遅れやオフィス需要先細り懸念を市場が意識。カメラ事業自体も大きな利益寄与なく、一部製品は赤字という報道も過去に存在。
今後の見通し・注目点:近年、ペンタックスブランドでフィルムカメラ復活プロジェクトを立ち上げるなど、クラシックカメラ愛好家に向けたユニークな試み。デジタル一眼レフもコアなファン層に支えられ、小規模ながらも事業継続の意欲を表示。投資家にとってカメラ事業の影響は限定的だが、「知る人ぞ知る名ブランド」を抱えることで企業ブランド価値を高める効果は無視できず。注目すべきは主力のオフィス事業の行方。コロナ後のハイブリッドワーク普及で複合機需要がどう変化するかが株価のカギ。カメラ事業に関するリスクは撤退や縮小の場合に固定費負担が発生する程度だが、事業そのものが小さいため収益インパクトは軽微。ペンタックス・GRといったブランドを活かし独自路線を歩む姿勢は、同社の技術者魂を示すものとして好意的に受け止められる可能性も。
レンズ・光学機器関連メーカー
タムロン(7740)
概要・ポジション:交換レンズ専業メーカーとして世界的に知名度が高い企業。自社ブランドで一眼レフ・ミラーレス用交換レンズを多数販売するほか、カメラメーカーへのOEM供給も実施。ソニーが筆頭株主(出資比率約12%)であることから、ソニーEマウント用の高コスパレンズなどで近年存在感増大。監視カメラや車載カメラ向けの業務用レンズも手掛け、光学技術を幅広い分野に展開。
業績・指標:カメラ市場縮小に伴い一時苦戦も、ミラーレス機向け交換レンズ需要の増加に乗り、足元では業績回復傾向。2022年12月期は円安も寄与し増収増益。株価800円台後半。**予想PER約9.5倍、PBR約1.9倍、配当利回り約4.2%**と割安かつ高配当が魅力。市場からはカメラ関連需要減への懸念で低評価となっているが、業績次第で見直し余地。ソニー向け比率が高まっている点も注目され、安定株主の存在は戦略面でプラス。
今後の見通し・注目点:ミラーレス機への移行で新しいレンズ需要が生まれており、タムロンはその波に乗車。純正より廉価ながら高性能なレンズ群で支持を集め、売上を伸張。産業・監視用レンズも安定需要見込み。注目点は、カメラ市場全体の縮小を新分野で補えるかという点。ドローン用カメラレンズやスマートシティ向け高性能監視レンズなど、新用途開拓の動向に注目。投資リスクは主要取引先であるソニーの戦略に左右される点や、市場縮小で価格競争が激化する可能性。財務体質は健全で自己資本比率も高く、配当性向も比較的余裕があることから、中長期投資のインカムゲイン狙いとしても検討可能な銘柄。
HOYA(7741)
概要・ポジション:光学ガラスのトップメーカー。眼鏡レンズや半導体用フォトマスク基板など高機能ガラス製品で世界シェア保有。かつてはPENTAXブランドのカメラ事業も傘下に収めたが2011年にリコーへ譲渡。現在は光学材料・部品サプライヤーとしてカメラ業界を下支え。高性能レンズ用のガラス素材(特殊ガラス)やフィルター製品などを供給。多くのレンズメーカーがHOYA製ガラスを採用。医療(内視鏡・眼科)やIT(HDD部品等)の分野にも注力。
業績・指標:高収益企業として有名。2023年3月期の営業利益率は30%近くに到達。カメラ向け事業単体の売上開示はないが、電子部品セグメントに含まれる光学ガラス事業は半導体関連需要もあり堅調。株価は1株あたり16,000円前後と高額。予想PER約25倍、PBR約5.8倍、配当利回り1.5%前後と成長企業らしい評価。配当利回りは低めながら、毎年自社株買いも実施しており、総還元性向は比較的高い傾向。キャッシュリッチでM&A巧者としても著名。
今後の見通し・注目点:カメラ関連では、レンズの高性能化に伴い高品質ガラス素材への需要が底堅く推移する見込み。ミラーレス用の大口径・高解像度レンズでは特殊低分散ガラスなどHOYAの素材が不可欠。同社はそうしたコア材料で高い市場支配力を保有。仮にカメラ用レンズ本数が減少しても単価上昇でカバーできる構造。成長ドライバーは半導体マスクブランクスやHDDプラッタ基板などで、こちらはデジタル需要拡大を背景に伸長が期待。投資家にとってHOYAは「カメラ関連」というより**「ハイテク素材・医療機器」**銘柄だが、光学ガラスで培った技術力が多方面に応用されている点が強み。リスクとして、カメラ市場以外も含めた主要顧客の投資動向に業績が左右される部分はあるが、分散された事業ポートフォリオと圧倒的な収益性から、安定成長株として評価が定着。
オハラ(5218)
概要・ポジション:光学ガラス専業で世界的に有名なメーカー。カメラ用レンズ素材(硝材)のほか、双眼鏡・プロジェクター・半導体露光装置用など多用途のガラスを製造。高屈折率・低分散ガラスなど高度な製品で強みを保有。カメラレンズの高性能化を陰で支える存在。同社のガラス素材はキヤノンやニコン、ライカ、ツァイス、シグマなど国内外の著名レンズメーカーに採用。
業績・指標:光学業界の景気に左右される面があり、業績はやや変動。近年はデジタルカメラ向け需要が減少する一方、半導体装置向け特殊ガラスが伸びるなどの変化。2022年10月期は売上高188億円・営業利益17億円で、カメラ向け低迷もあって減収減益。2023年以降はカメラ用ガラス需要も下げ止まりつつある。株価1,000円前後。**PER約17倍、PBR約0.6倍、配当利回り約2.3%**と保守的な水準。PBRが0.5倍台と解散価値以下になっているのは、市場が同社の成長性に懐疑的なため。裏を返せば資産バリューの観点では割安感。財務は自己資本比率80%超と盤石。
今後の見通し・注目点:高性能カメラや天体望遠鏡、VR/AR機器用レンズなど、先端分野での光学ガラス需要が新たなチャンス。オハラもVR/AR向け樹脂材料とのハイブリッドレンズなど新製品開発に取り組み中。半導体露光装置用ガラスなど産業向け比率を高める方針。カメラ市場自体は縮小傾向でも、残存するレンズは高級化が進むため、一眼レフやシネレンズ向けなどで一定の需要継続が見込まれる。投資上の注目点は**「業績底入れによる株価見直し余地」**。需要低迷期にコスト削減を進めたことで損益分岐点は低下。小幅な需要回復で利益が跳ねる可能性。リスクとしては市場ニーズの変化(ガラスからプラスチック非球面レンズへの置換など)や海外競合(ショットやコーニング等)との競争。高品質ニッチ市場では依然優位性があり、中長期投資では配当を得ながら気長に保有するスタンスも可能。
(参考)ケンコー・トキナー、シグマなど
上場企業ではないが、交換レンズやカメラ用品のメーカーとしてケンコー・トキナー(Tokinaブランド)やシグマも存在。ケンコー・トキナーはフィルターや三脚、双眼鏡等も含む総合光学メーカーで、上場はしていないが国内市場では重要なプレイヤー。シグマは高品質レンズで定評があり海外売上も大きい企業だが、こちらも非上場(創業家経営)。両社ともミラーレス時代に合わせて製品展開。シグマはfpシリーズの小型フルサイズカメラなども製造。投資対象には直接ならないが、市場競争の動向を探る上で注視すべき存在。
映像センサー・半導体関連メーカー
ソシオネクスト(6526)
概要・ポジション:富士通とパナソニックのシステム半導体事業を統合して2015年に発足。2022年に上場した半導体設計ファブレス企業。映像・画像処理SoC(システムオンチップ)分野に強み。**デジタルカメラ向け画像処理エンジン(Milbeautシリーズ)**を長年手掛け。ニコンやライカのカメラ内エンジンに採用された実績。現在も高機能な画像処理ICを供給。車載カメラ用SoCや映像圧縮LSIなども展開。「カメラの頭脳」を作る会社。
業績・指標:2023年3月期は売上高1,374億円、営業利益238億円と好調。車載向けなどの需要増で増収増益達成。上場後の株価は急騰したが、その後は半導体市況懸念から調整。株価は直近2,600円台。予想PER約25倍、配当利回り約1.8%。時価総額は約3,000億円弱で、成長株として市場の注目を集める。財務面では無借金経営で、自己資本比率も高く安定。配当は上場後しばらく控えめだが、業績拡大に伴い増配の可能性も。
今後の見通し・注目点:デジタルカメラ向けSoCに加え、監視カメラや産業用カメラ、さらにはデータセンター向け動画圧縮LSIなど応用範囲を拡大。車載カメラ画像処理ではADAS(先進運転支援システム)の普及で需要拡大が期待。投資家にとっての注目点は**「画像処理SoCの寡占的地位を活かして持続成長できるか」**。デジタルカメラ自体の市場は縮小しても、高度な映像処理ニーズはあらゆる分野で高まっており、同社はその恩恵を受ける立場。リスクとしては半導体業界特有の市況変動や、大手ファブレスとの競合(車載向けでのNVIDIA参入など)。高性能かつ省電力な専用SoC開発力には定評があり、引き合いは強い模様。中期的にはAI映像解析との融合など、新たな成長ストーリーも描ける可能性。
メガチップス(6875)
概要・ポジション:大阪発祥のファブレス半導体メーカー。ゲーム機向けLSIなどから成長した会社。近年はデジタルカメラ向け画像処理LSIにも注力。世界最高水準の高解像度・高画質処理やノイズ低減技術を実現するコントローラを開発。大手カメラメーカーやスマートフォンメーカーに同社のカメラ用コントローラが採用された実績。現在はIoT、5G通信向けなど事業領域を拡大中だが、カメラ・イメージング関連も依然重要な分野。
業績・指標:2023年3月期は円安追い風もあり増収増益だったが、2024年3月期は一部需要調整で減収。売上高は連結500億円規模、営業利益率は10%弱。株価5,000円前後。**予想PER約17倍、PBR約0.9倍、配当利回り約2.6%**と堅実なバリュエーション。自己資本比率は50%超で財務良好。設備を持たないファブレスモデルのため利益変動は需要に左右される傾向。カメラ向け売上は公表されていないが、ゲーム機・IoT関連LSIと並ぶ柱の一つ。
今後の見通し・注目点:**「アナログ&イメージング技術」**を強みとして掲げ、デジカメ用高速画像処理IP「ミルビュー(Milbeaut)」をベースにしたモジュールや、監視カメラ向け画像認識ソリューションの提供にも意欲。カメラ市場自体は縮小しても、産業用の高機能カメラやスマホ向け高度処理のニーズは底堅く、そうした領域で事業機会を捉える戦略。投資上は任天堂向けなどゲーム関連の動向が株価に影響を与える側面もあるが、カメラ・センシング分野の技術資産は高く評価可能。リスクとしては特定顧客への売上依存や半導体外部環境の変化。同社はM&Aでセンサー開発会社を取り込むなど成長策も積極的で、中長期には車載・IoT社会における「目(イメージング)」の需要を取り込めるポテンシャル。堅実配当を維持しつつ研究開発投資にも積極的で、技術系中堅株として注目。
周辺機器・部品サプライヤー
ニデック(6594)〔旧 日本電産〕
概要・ポジション:精密小型モーターの世界最大手。HDD用モーターから自動車用駆動モーターまで幅広い分野をカバー。カメラ分野では、グループ会社のニデックコパル(旧・ミネベアコパル/日本コパル)がシャッター機構ユニットやレンズ絞りユニット、オートフォーカス用アクチュエータなどを供給。手ブレ補正機構(OIS)用アクチュエータ等も手掛け、デジタル一眼・コンパクトのみならずスマートフォン向けモジュールにも関与。**「カメラの機械部分」**で高シェアを持つサプライヤー。
業績・指標:2023年3月期は売上高2兆円・営業利益1200億円規模で、EV用モーターの先行投資負担などから減益。カメラ関連事業単独の数値は開示されていないが、精密小型モータ部門の中で一部を占める。株価2,700円台。予想PER約18~19倍、PBR約1.9倍、配当利回り約1.5%。創業者から新CEOへの交代劇や業績減速で株価は軟調だったが、長期的な成長期待は依然高く評価。配当は年40円(利回り約1.5%)で今後増配余地も。
今後の見通し・注目点:ニデックにとってカメラ向けは全売上の数%程度と推測され、現在の最重点はEV駆動モーター。しかしカメラ向け事業も業界寡占に近く、安定した収益源。将来的にデジタルカメラ台数が減少しても、高性能機の複雑な機構需要は続くため、ニデックコパルの技術が活きる場面は残存。スマホ向けアクチュエータ等で新需要を取り込む可能性も。投資家の関心事はむしろEVやロボット分野だが、カメラ機構事業の堅実さは同社の「総合モーター屋」としての強みを下支え。リスクとしては自動車向け投資の失敗や為替変動があるが、カメラ関連事業自体に大きな懸念は少ない。引き続き**「モーターベンチャー」**精神で新市場開拓に挑む姿勢に期待。
ミネベアミツミ(6479)
概要・ポジション:精密部品メーカーで、ボールベアリング世界首位として著名。近年は電子部品との複合企業。カメラ分野では、旧ミツミ電機との統合によりレンズ用アクチュエータ(フォーカス駆動モーター)や手ブレ補正ユニット、絞りユニットなどを扱い。スマートフォン向けにもカメラモジュール用のアクチュエータを供給。2012年には小型AFモーター大手のシコー(当時上場)を支援・買収して能力強化。**「カメラの眼球を動かす筋肉」**のような役割を担当。
業績・指標:2023年3月期は売上1兆円・営業利益870億円と過去最高益。航空機向け事業売却益など特殊要因もあったが、本業も好調。カメラ向け事業の比率は公表されていないが、機械加工事業(主にベアリング)や電子機器事業の一部として組み込まれる。株価2,000円強。予想PER約14倍、PBR約1.1倍、配当利回り約2.2%。同社は連続増配方針で2024年3月期も年間46円配(予想)に増額予定。指標面では適正~やや割安感があり、株価は世界景気や為替の影響を受けやすい傾向。
今後の見通し・注目点:「機械×電子の重ね合わせ」による独自製品を強みにしており、カメラ分野でも高度化・小型化ニーズに応える姿勢。特にスマートフォン向けでは手ブレ補正(OIS)用のボイスコイルモーターやアクチュエータで存在感を表示。一眼カメラ向け高精度モーターも引き続き供給していく見込み。同社全体では、スマホ・ICT向け部品需要や自動車電子化が今後の成長を左右。カメラ関連は売上構成上は小さいものの、高いシェアを持つ分野であり利益貢献度は無視できない。投資家にとっては**「精密部品の安定供給者」**として、中長期で利益成長と増配が期待できる銘柄。リスク要因は景気変動や海外生産比率の高さによる為替影響だが、足元では業種・顧客の分散が進み、収益安定性が増加。カメラというニッチ領域でもトップシェアを取る姿勢は、同社の競争力の裏付け。
その他部品・周辺機器メーカー
上記以外にも、デジタルカメラに関わる部品メーカーやアクセサリーメーカーが存在。その多くは中小型で個別に注目されにくいが、カメラ産業を支える重要な役割を担当。
例えば、**菊池製作所(3444)**はカメラ筐体や精密機構部品の試作・量産を行い、主要カメラメーカーの新機種開発を支援。STG(5858)は高級カメラやドローン向けのマグネシウム合金部品を製造し、軽量・高強度化ニーズに対応。**オプトラン(6235)**はカメラレンズの真空蒸着コーティング装置で世界シェアを保有。レンズの反射防止膜や特殊膜の製造装置を多数納入。**シキノハイテック(6614)は産業用組込カメラモジュールや半導体検査装置を手掛け、ATMや監視カメラ向けのCMOSカメラモジュールで国内シェア90%**を誇る。**帝国通信工業(6763)**はノーブルブランドの電子部品メーカーで、可変抵抗センサーなどをカメラや車載向けに提供。近年は「ミラーレス一眼カメラを中心に売上が伸びた」との報告も。これら企業は一社一社の売上規模こそ小さいものの、技術的には高いニッチシェアを保有し、カメラ製品の品質向上に寄与。
主な関連銘柄の比較(株価・指標)
| 企業名(証券コード) | 株価(円) | 予想PER (倍) | PBR (倍) | 配当利回り (%) | カメラ事業の位置づけ・特徴 |
| キヤノン (7751) | 4,100 | 11.5 | 1.2 | 3.9 | 世界首位級カメラメーカー。売上の21%がイメージング。高収益&高配当。 |
| ニコン (7731) | 1,460 | 16 | 0.8 | 3.4 | カメラ売上は約40%。Zシリーズ好調で復調。低PBRのバリュー株。 |
| ソニーG (6758) | 3,640 | 24 | 2.6 | 0.7 | αシリーズで世界2位、CMOSセンサー世界首位。多角経営で成長評価。 |
| 富士フイルムHD (4901) | 3,060 | 14 | 1.1 | 2.3 | ミラーレス&チェキが柱。イメージング利益は全社23%。医療など他事業が主。 |
| パナソニックHD (6752) | 1,545 | 10 | 0.8 | 3.0 | LUMIXブランド展開。カメラ事業比率小。ライカと提携強化。総合電機バリュー。 |
| リコー (7752) | 1,370 | 14 | 0.75 | 3.0 | PENTAX/GRを保有。事務機主体でカメラはニッチ。フィルム機復活等ユニークな取組み。 |
| タムロン (7740) | 870 | 9.5 | 1.9 | 4.2 | 交換レンズ専業。ソニーが筆頭株主。ミラーレス用で成長。高配当。 |
| HOYA (7741) | 16,800 | 25 | 5.8 | 1.5 | 光学ガラス世界大手。カメラ用素材を供給。医療・半導体基板が収益牽引。高収益成長株。 |
| オハラ (5218) | 1,060 | 17 | 0.6 | 2.3 | 光学硝子専業。高性能レンズ材料で強み。業績底這いも資産割れ水準で割安。 |
| ニデック (6594) | 2,740 | 18.8 | 1.9 | 1.5 | 小型モーター世界王者。カメラ用シャッター・AF機構供給。EVモーターに注力中。 |
| ミネベアミツミ (6479) | 2,080 | 14 | 1.1 | 2.2 | 精密部品大手。レンズ駆動・OISユニット供給。スマホ向け比率高い。堅調増収増益。 |
| ソシオネクスト (6526) | 2,650 | 25 | 2.0 | 1.8 | 画像処理SoC開発。ニコン等にエンジン供給。車載・監視向けにも展開。成長株。 |
注: 株価・指標は2025年7月上旬の情報を基に概算したもので、実際の市場データと多少乖離する場合あり。各社の「カメラ事業の位置づけ」は本文記載の内容を要約。
おわりに
総じて、デジタルカメラ関連株への投資では**「個々の企業がカメラ市場の変化にどう対応できるか」**を見極めることが重要。スマートフォンの高性能化によりエントリー層の需要は細っているが、その反面プロ・ハイアマ層への集中や新たな映像体験(VR/AR、360度カメラ等)への展開といった形で各社が戦略を練っている。キヤノンはネットワークカメラや商業印刷向けへの多角化、ソニーは画像センサーの高度化、富士フイルムはチェキや大判といった独自市場創出、と強みを活かした差別化が進行。