6547 グリーンズ 初回レポート
証券コード6547 グリーンズ について、今期における業績予想を紹介する。同社は1957年7月に駅前旅館「新四日市ホテル」を創業し、1964年1月に有限会社新四日市ホテルとして法人化された。その後、1987年7月に株式会社グリーンズへ社名変更し、2003年11月には米国チョイスホテルズインターナショナル社とマスターフランチャイズ契約を締結している。2017年3月には東京証券取引所市場第二部及び名古屋証券取引所市場第二部に株式を上場し、翌2018年3月には両市場の第一部銘柄に指定された。2022年4月の市場区分見直しにより、東京証券取引所スタンダード市場及び名古屋証券取引所プレミア市場に移行している。同社は「おもてなしと生活文化の創造」をスローガンとして掲げ、ホテル運営により収益を上げる専業のホテルオペレーターである。事業部門としてはホテル事業の単一セグメントであり、「チョイスブランド」と「オリジナルブランド」の2つのブランドを展開している。
チョイスブランド事業では、米国チョイスホテルズインターナショナル社が保有する世界的ホテルブランド「コンフォート」を中心に、宿泊特化型で中間料金帯のホテルを日本全国の政令指定都市等の駅前立地を中心に展開している。主要顧客は、出張利用のビジネス客、ファミリー・カップルを中心とするレジャー客、及びインバウンド客である。公式サイトやオンライン旅行会社からの宿泊予約獲得、旅行会社の販売する旅行商品への客室提供、法人契約先への特別割引優待プランの販売営業等が主要な収益経路である。特に、2024年7月以降にロードサイド型「コンフォートイン」22店舗の新規開業があり、売上高に大きく貢献した。また、「コンフォートホテルERA」や「Ascend Hotel Collection™」といったレジャー向け新ブランドの展開も進め、レジャー需要の獲得に貢献している。
オリジナルブランド及びその他事業では、当社の60年以上にわたるホテルオペレーターとしての実績を活かし、三重県を中心に地域特性に合わせたホテルを展開している。宿泊特化型ホテルから、宴会場やレストラン等を併設したシティホテルまで多岐にわたるタイプを提供している。また、収益構造の改善が必要な小規模チェーンや後継者難を抱える個人経営のホテル等を、賃借、M&Aや運営受託等を通じて店舗展開する手法も採用しており、新規建築物件に比べて投資負担を抑え、従来の顧客基盤を引き継ぐメリットがある。 なお、その他事業は、ホテルに併設するテナント等に対する賃貸事業及び不動産管理事業を主としており、売上高に占める割合は極めて軽微である。
同社のホテル展開の特徴として、ほとんどのホテルにおいて自社でホテル建物を所有せずに、ホテルオーナー等が建築したホテル建物を賃借する「リース方式」を採用している点が挙げられる。これにより、ホテル建物を所有することによるアセットリスクを最小限に抑え、さらに出店時において多額の投資が必要となる開発リスクを抑制し、建物自体の修繕費等もオーナー負担とすることで最小限に抑えることができるというメリットがある。なお、自社でホテル用土地を所有もしくは賃貸し、建物を所有して運営する「所有直営方式」を適用しているホテルも6店舗展開している。
また、チョイスブランド、オリジナルブランド共通のKPIとしてはADR(客室平均単価)とOCC(客室稼働率)がある。


上記はグリーンズが開示しているデータを基に我々が独自に行った業績予想である。
同社の成長は 同社の専業ホテルオペレーターとしてのノウハウと、多様なブランド展開および出店戦略の相乗効果に支えられている。特に、インバウンド需要の回復と国内レジャー需要の拡大を捉える多角的な施策が、全社的な増収および増益を牽引している。
チョイスブランド事業では、堅調な需要と客室単価(ADR)の上昇が業績を力強く牽引している。2025年6月期3Q連結累計期間では、インバウンド需要の継続と国内の個人消費の回復を背景に、業績は大きく伸長した。積極的な新規出店により全体の客室数が増加したため、客室稼働率は前年同期比で79.9%とわずかに低下したが、それを補って客室単価が同6.2%増の10,300円へと大きく向上した。その結果、売上高は前年同期比24.3%増となる318億4,400万円を達成している。
この好調な業績の背景には、積極的な新規出店戦略がある。2024年7月以降に開業したロードサイド型の「コンフォートイン」22店舗が売上高に大きく貢献した。これらの出店では、自社で建物を所有せずに賃借する「リース方式」を多用しており、これによりホテル所有に伴う財務リスクを抑え、初期投資や修繕費の負担を抑制した資本効率の高い事業展開を可能にしている。さこれらの取り組みに加え、会員制度「Choice Guest Club™」の運営による優良顧客の囲い込みや、インターネット動画広告、デジタルサイネージを活用したプロモーション活動も積極的に行い、強固な顧客基盤を築いている。
オリジナルブランド事業においても、客室単価の向上が収益性を支えている。客室稼働率は前年同期比で73.9%と微減したものの、地域特性を活かした巧みな販売施策が奏功し、客室単価は同7.6%増の7,124円となった。一方で、店舗数の変動とM&A戦略が業績に影響を与えている。2025年6月期1Qから3Qにかけて2店舗がポートフォリオから減少した影響で、売上高は前年同期比2.3%減の48億1,300万円となった。しかし、同社は収益構造の改善が必要な小規模チェーンや後継者問題を抱える個人経営のホテルを、賃借、M&A、運営受託といった多様な手法でポートフォリオに加える戦略を推進している。この戦略は、新規建築に比べて投資負担を抑えつつ、既存の顧客基盤を引き継げるという大きなメリットがある。
以上の予想と会社予想との比較を以下に示す。

我々の予想では2025年6月期の予想は売上高は会社予想を同水準となったが、営業利益は下回る予想となった。
同社は直近に公表された配当予想からの修正を行い、2025年6月期の年間配当予想を35.00円(普通株式)に上方修正した。また、通期の連結業績予想も上方修正されており、売上高は46,800百万円から49,000百万円、営業利益は5,000百万円から6,000百万円を予想している。
財務状態については、2024年6月期末に優先株20億円の消却があったものの、自己資本比率は2024年6月末の29.4%から、2025年3月末時点で36.6%に向上しており、財務基盤の強化が進捗していることが確認された。
同社は、新中期経営計画「GREENS SUSTAINABLE JOURNEY 2028」を策定し、将来のポートフォリオ拡大を通じた持続的な成長を実現するための準備期間と位置付けている。今後は、需要をとらえた出店加速により2028年6月期に18,000室体制を目指し、特にレジャーブランドやロードサイド業態のビジネスモデルを確立することで、事業のレジリエンス性を高め、収益機会を拡大する方針である。これにより、2028年6月期には売上高600億円、営業利益70億円を目標とし、自己資本比率も54%への向上を目標としており、財務基盤のさらなる強化を図る。投資判断を下す際にはこのような点を踏まえた上で慎重に判断する必要があるだろう。