世界の家庭用エアコン市場展望(2025~2030年)と関連企業分析
グローバル市場規模と地域別予測(2025~2030年)
世界の家庭用エアコン(空調)市場規模は2025年に約2,121億7,000万米ドルに達し、年平均成長率(CAGR)約**5.15%**で拡大し、2030年には約2,727億3,000万米ドルに達する見通し。
| 地域 | 市場規模(2025年頃) | 市場規模(2030年) | 2025-2030年 CAGR |
|---|---|---|---|
| 世界全体 | 約2121.7億米ドル | 約2727.3億米ドル | 5.1% |
| 中国 | 約370億米ドル | 約491億米ドル | 4.8% |
| アメリカ | 約312.6億米ドル | 約384.5億米ドル | 7.9% |
| 東南アジア | 約50億米ドル | 約75億米ドル | 7% |
| 欧州 | 約213.6億米ドル | 約301.2億米ドル | 5.9% |
| 日本 | 約180億米ドル | 約260億米ドル | 7.7% |
中国や東南アジアを含むアジア太平洋地域が世界市場を牽引する最大市場。特に中国は単一国として最大のエアコン需要国だが、市場成長率は成熟化により穏やかで、年率4~5%程度の伸びにとどまる見込み。
東南アジア諸国は高温多湿な気候にさらされており、経済成長と生活水準向上に伴う需要増から年率7%前後の高い成長を予測。米国を中心とする北米市場や、欧州市場も、省エネ規制や住宅向けHVAC需要の増加に支えられ、それぞれ年率5~8%程度の成長が見込まれる。
日本市場は既に普及率が高い成熟市場だが、猛暑の常態化や省エネ・環境対応需要により年間7%を超える比較的高い成長率を予想。
市場成長要因と動向
世界的にエアコン需要が拡大している背景:
特に近年の異常高温(酷暑)やヒートアイランド現象によって、夏季を中心に室内を快適に保つ冷房需要が高まる。また、新興国の急速な都市化により人口密集都市が増え、住宅や商業施設での空調需要が一段と増加。
エネルギー効率規制の強化や環境意識の高まりも市場を後押し。各国政府が省エネ基準や補助金制度を導入して高効率エアコンの普及を促進。メーカーもインバーター技術や環境に優しい冷媒を採用した製品開発を推進。
技術面では、スマートエアコンや空気清浄機能付きエアコンなど付加価値の高い製品が各社から投入され、市場の拡大に寄与。スマートフォン連携やAIによる自動制御機能を備えたエアコンへの需要も高まっており、快適性だけでなく健康面・空気質への関心から室内空調への投資が増加。
主要プレイヤー動向
グローバルな空調業界は、多国籍の大手メーカーから各国の地域プレイヤーまで競争が激化。技術革新や省エネ性能、製品ラインナップで差別化を図る構図。
世界のエアコン市場をリードする主要企業:
なかでもダイキンは空調専業メーカーとして世界トップシェアを誇り、売上高は世界第2位の格力電器を大きく上回る2兆円超に到達。
日本メーカーでは、パナソニックが国内家庭用エアコン市場で長年トップシェアを維持してきたが、近年はダイキンが追い上げ。また三菱電機や日立も家庭用・業務用エアコンを展開し、富士通ゼネラルや三菱重工など専門性の高いメーカーも国内外で存在感を示す。
日本の主なエアコン関連上場企業と事業概要
日本企業の中で、家庭用エアコンの製造・販売、部品供給、関連サービスに携わる代表的な銘柄と事業内容:
| 企業名(証券コード) | エアコン関連事業の概要と比率 |
|---|---|
| ダイキン工業 (6367) | 世界最大手の空調専業メーカー。家庭用から業務用まで空調機器を開発・製造し、グローバル市場でトップシェアを持つ。事業の柱は空調機器で、売上高の約90%以上が空調事業を占める(残りはフッ素化学など)。まさに空調を主力とする企業であり、家庭用エアコンも国内外で展開。 |
| 三菱電機 (6503) | 総合電機大手で、家庭用ルームエアコンからビル空調まで幅広く手掛ける。住宅設備ブランド「霧ヶ峰」で知られる。空調・家電を含む**「空調システム&家電」部門の売上高は約1.4兆円**(2023年度)で、同社全体売上の約25%以上を占める重要事業。他部門(FA機器、重電、電子デバイス等)に比べても大きな柱の一つ。 |
| パナソニック ホールディングス (6752) | 家電大手で、家庭用エアコンは「ナノイー」技術など付加価値製品を展開。国内家庭用エアコン市場で長年シェア首位を維持してきた実績。エアコン事業は同社のアプライアンス(白物家電)部門に属し、同部門はグループ売上全体の約4割を占める。エアコン単独ではグループ全体の一桁台後半程度と推定されるが、依然として主要製品分野の一つ。 |
| 富士通ゼネラル (6755) | 富士通グループ系の空調機メーカーで、海外では「General」ブランドで家庭用エアコンを展開。空調専業に近く、売上の約88%を空調機事業が占める。国内では主に住宅用エアコン、海外では欧米や中東向けにも展開しており、エアコン事業が収益の中核。 |
| 日立製作所 (6501) | 総合電機・インフラ企業。家庭用エアコン事業は、2015年に米ジョンソンコントロールズ社との合弁**「ジョンソンコントロールズ-日立空調」**に移管しており、日立はその40%を出資(同JVの年商は約3,500億円)。日立本体の連結売上(10兆円規模)に占める比率は数%程度に留まり、空調は同社全体では非中核事業。ただし合弁会社を通じて日立ブランドのエアコンは国内外で販売継続。 |
| 三菱重工業 (7011) | 総合重工メーカー。子会社の三菱重工サーマルシステムズを通じて家庭用・業務用エアコンを製造(「ビーバーエアコン」ブランドなど)。空調事業は冷凍機・輸送用空調等も含め**「物流・冷熱事業」セグメントに属し、同セグメントは売上約9,562億円(2022年度)で全社の約20%弱**を占める。ただし同セグメントにはフォークリフト等も含まれ、家庭用エアコン単独の比率は一桁台と推定される。国内業務用エアコン市場ではシェア上位(8%程度)だが、重工全体では空調は位置付け小さめ。 |
各社とも家庭用エアコンを含む空調事業に力を入れているが、その重要性は企業によって様々。ダイキンや富士通ゼネラルのように空調専業で事業の大半を占める企業もあれば、三菱電機やパナソニックのように多角経営の中の一部門として空調を抱える企業も存在。
特にダイキンは空調に経営資源を集中しグローバル展開することで、高収益と成長を実現。一方、日立や三菱重工のように空調事業が全体では小さめながらも、技術力を生かして特定分野で存在感を示す企業もある。
総じて、日本メーカーは省エネ性能や信頼性で強みを持ち、国内市場だけでなく海外市場でも一定の評価を獲得。今後も気候変動への対応や環境規制の強化により、エアコン市場は拡大が見込まれ、各社のエアコン関連事業もそれぞれの戦略に沿って成長が期待される。
各企業はインバーター技術やIoT/AI連携によるスマート化など付加価値向上に注力しており、競争力強化によって市場ニーズに対応していく方針。今後は脱炭素社会に向けた省エネ・環境対応エアコンや、ヒートポンプ暖房への需要拡大も見据え、これら日本企業の動向が世界の空調市場に与える影響も大きくなっていく見通し。