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9252 ラストワンマイル25年8月期3Q決算後レポート

公開日:2025年08月05日
Note

7月15日に発表されたラストワンマイルの25年8月期3Q決算を受けて業績予想モデルのアップデートを行なった。

・その他収益、その他費用を追加

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株式会社ラストワンマイルの2025年8月期3Q決算を中心にその内容を振り返り、次回決算における注目点を解説する。

 2025年8月期3Qの決算は、累計期間と3Qで異なる収益性の動向が見られた。

まず、3Q累計期間の売上収益は114億9,629万で、前年同期比34.1%の増収を達成した。この増収は、既存事業の堅調な推移に加え、M&Aで取得した新規会社の貢献が大きく、寄与率は既存会社が約57.5%、新規会社が約42.5%であった。営業利益は9億9,835万(前年同期比41.9%増)と大幅な増益であり、この増益は主に新規会社による貢献(寄与率約119.4%)と、既存のアライアンス事業の順調な推移によるものである。一方、既存会社は利益面で約△19.4%の寄与となり、戦略的な投資が先行したことを示唆している。

一方、3Q単体に目を向けると、売上収益は40億8,450万7千円(前年同期比22.5%増)であったが、営業利益は2億9,351万(同31.3%減)と増収減益に着地した。この減益の主な要因は二つある。一つは、前年同期に計上された陰圧機販売に係る一過性の利益(5,700万円)がなくなったこと。もう一つは、アライアンス事業において、将来の収益拡大を見据え、受注率の高い優良な見込顧客情報の獲得に戦略的な先行投資を実施したことである。この投資は短期的な利益を圧迫したが、将来の売上基盤を固めるための動きと説明されている。

 2025年8月期3Q累計期間の販管費は前年同期比で40.5%増加した。この増加額22億3,600万円のうち約半分を占めるのが、顧客紹介料にあたる支払手数料である。これは単なる費用増ではなく、同社のアライアンス事業の根幹をなす戦略的な先行投資と位置づけられる。このビジネスモデルは、不動産管理会社などが持つ顧客の名簿(見込顧客情報)を仕入れ、それに基づき各種サービスを提案・販売するものである。特に、受注率の高い優良な情報を積極的に獲得することで、短期的なコストは増加するものの、将来のストック型収益に繋がる優良顧客を確保している。この投資が来期以降の利益の源泉となる構造であり、年間を通じて継続的に行われる予定であるが、同社によると中期経営計画の達成という最優先事項に鑑み、全体の費用対効果を常に検証し、事業環境の変動などにより計画達成への影響が懸念される場合には、投資の優先順位を見直しその規模を一時的に抑制することも視野に入れているとのことだ。

 主要KPIであるストック型売上合計は継続的に増加している。特にインターネット回線は既存事業とM&Aによる子会社の収益化が寄与し大きく伸長した。また、ガスや会員サービス等を含むその他項目も好調である。一方で電気事業については、燃料費高騰などの不確定要素から積極的な顧客獲得を抑制しており、売上高は前年比で減少した。しかしこれは、収益性を最大化するための戦略的な判断である。同社の電気事業は、自社サービス「まるっとでんき」と他社サービス(東京ガス、関西電力等)の取り次ぎを組み合わせているが、他社サービスを取り次ぐことでLOMグループ自身は燃料代高騰といった価格変動リスクやサービス提供に伴う原価を直接負うことなく安定した手数料収入を得られる点にある。さらに、電気契約者の平均的な居住期間が約3年と比較的短いことを踏まえ、月々のストック収益に固執するよりも、4-5年分の収益に相当するフロー型の収益を確保する方が経済合理性が高いと判断している。このフロー型収益の獲得が、電気事業全体の粗利率向上に貢献している。

 同社は中期的な成長戦略として、M&Aによる事業領域の拡大と主力事業の強化を着実に実行している。2022年以降、BBCやCITV光など6社を完全子会社化し、2025年9月1日には集合住宅向け無料インターネット事業を展開する株式会社テルベルの完全子会社化を予定しており、事業基盤のさらなる拡大が期待される。特に注目すべきは、子会社である株式会社HOTEL STUDIO(HS)が進めるホテル事業の戦略転換である。従来の「ホテル運営受託事業」に加え、HS自らが事業オーナーとなる「直営モデル」を開始した。これは、宿泊代金の全てを収益として享受できるため、リスクは伴うものの、長期的かつ安定的に大きな収益を見込めるモデルである。この直営モデルの第1号案件として、海外法人との提携により、渋谷の住宅街にヴィラ型の「ALMOND HOTEL」を2026年1月から開業予定である。このヴィラ型物件は、階数の高い建物を建てることができないという土地の制約から大手デベロッパーが参入しにくいニッチな市場にある。同社は2026年8月期に営業利益18億円、2027年8月期に22億円という中期経営計画を掲げており、2025年8月期をそのための「準備の年」と位置づけている。ホテル事業の直営化はその中核戦略であり、改装費など数億円単位の投資も積極的に行っていく方針である。資金は主に銀行からの有利子負債で調達する計画で、HSには既に運営部隊が存在するため、販管費の増加は限定的に抑えられる見込みである。この直営モデルへの転換により利益率は低下するが、利益額は飛躍的に増大すると期待される。

 以上の点を踏まえると、同社はM&Aによる規模拡大、アライアンス事業における先行投資、そしてホテル事業のビジネスモデル転換という、中期的な成長に向けた布石を着実に打っている段階にある。これらの戦略的投資の成果が明確になれば、同社の持続的な成長に対する市場の評価はさらに高まるであろう。