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146A コロンビア・ワークス 25年12月期 初回レポート

公開日:2025年10月07日
Note

 

 証券コード146A コロンビアワークスについて、今期の業績予想について紹介する。同社はオリックスなど大手不動産会社で不動産開発や不動産金融のキャリアを積んだ代表取締役の中内準氏とCFOの水山直也氏によって2013年に設立され、2024年3月に東証スタンダード市場へ上場した。社名の「コロンビア」は「コロンブスの」を意味し、新大陸を発見するようにゼロから新しい価値を創造する精神が込められている。その名の通り、両氏はキャリアを通じて抱いた画一的で没個性的な物件ばかりが供給されるマンションのコモディティ化という業界の課題を原点に「人が輝く舞台を世界につくる」という理念を掲げ、不動産開発事業の単一セグメントで事業を展開している。

 同社の事業の根幹は、この理念を具現化するテーマ型不動産開発にある。このテーマ型開発は大手デベロッパーが万人受けする物件開発をせざるを得ない中で、ニッチなターゲットに絞り込むリスクを取る同社ならではの強みである。主軸である不動産開発サービスは「LUMIEC」や「BIASTA」といった自社ブランドのレジデンスやオフィスを開発し、収益を上げるフロー型の事業であり、その最大の特徴は美容や健康といったユニークかつ永続性のあるテーマを設定し、サービスと一体となった高付加価値物件を提供することで他社との差別化を図っている点にある。独自のエリアマーケティング調査に基づくテーマ企画や販売後も重要となるサービスの運営ノウハウはフロンティアとして蓄積したものであり、他社が容易に模倣できるものではない。

 このテーマ型開発を支えるのが、状況に応じて使い分ける多様な事業スキームである。同社の開発は資金調達の方法によって大きく自社型とファンド型に大別される。まず自社型はBSに資産を取り込み自社でプロジェクトを進める手法である。この手法では、工期が2〜3年と長いものの25%~30%程度の高い売上総利益率が期待できる新築の不動産開発型と売上総利益率は15%~20%程だが工期が半年〜1年と短く資本を高速で回転させることが可能なバリューアップ型の両方を手掛ける。棚卸資産としてBSに残る期間は長くなるが、自社でリスクを取る分、売却時には大きな利益を得ることができる。そして、今後の成長を一段と加速させる原動力となるのが2025年から本格始動したファンド型である。これは子会社のコロンビア・アセットマネジメント社が組成したファンドにプロジェクトを早期売却してオフバランス化し開発を進める手法だ。売却益は出資比率に応じて分配されるため、自社で全ての利益を得る自社開発に比べ売上総利益率は1/4程度となるが、投資効率が飛躍的に高まるだけでなくファンドの運用・管理によって継続的なアセットマネジメント手数料という新たなストック収益も確保できる。このように開発種別と資金調達スキームを柔軟に組み合わせることで、得られる収益の額やリスク、オンバランス期間などを戦略的に調整し、期ごとの業績バランスを取っている。現在は、市況のリスクヘッジと安定的な利益成長のため、特に資本回転の速いバリューアップ型の比率を高める方針を掲げている。

 また、同社は不動産運営も手掛けることで、フロー収益だけでなくグループの安定収益基盤となるストック収益も確保している。ストック収益は主に家賃収入・賃貸管理・ホテル運営・AM報酬の4つの収益源から構成されている。賃貸管理は子会社のコロンビア・コミュニティ株式会社が手掛けており、自社で開発・売却した物件のオーナーから管理業務を受託し、その対価として事務委託手数料を得るビジネスモデルである。近年では、高いリーシング能力が評価され、自社開発物件だけでなく外部案件の受託も増加しており、今後の成長余地も大きい。ホテル運営は子会社のコロンビア・ホテル&リゾーツ株式会社が、同社が開発したアートホテルなどを運営し、宿泊料を収益源としている。現在、渋谷や元麻布などで複数の新規開発が進行中であるが、開業は2027年以降となるため、本格的な業績貢献はそれ以降となる見込みだ。そして、今後の成長の柱として期待されるのがアセットマネジメントサービスであり、ここから得られるAM報酬が新たな収益源となる。子会社のコロンビア・アセットマネジメント株式会社が不動産ファンドを組成・運用し、投資家からアセットマネジメント手数料を得る。2025年に第1号ファンドの運用を開始したこの事業は、単に手数料を得るだけでなく、グループ全体の成長戦略において重要な役割を担う。具体的には、ファンドが開発した不動産の安定的な売却先候補を確保する役割や、SPC活用による早期オフバランス化で資本効率を高めるといった戦略的な意義を持っている。これらに加え、開発した物件を売却するまでの期間に自社で保有することで得られる家賃収入も不動産運営によるストック収益の一部を構成している。


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上記はコロンビアワークスが開示しているデータを基に我々が独自に行った業績予想である。

 主軸である不動産開発事業の売上高は過去の実績値の傾向や今期の売上高、販売件数計画からそれぞれ数値を設定している。開発した物件の販売価格の算出に大きな影響を与える賃料は、同社独自のテーマ型開発が生む付加価値により相場より20%近く高い水準で設定することが可能となっている。これはプロジェクトが常に賃料(潜在的ニーズ)から逆算して計画されるため、収益性が低くなることが予測されるテーマは採用されないことも影響している。また、当初設定したテーマのターゲット層がずれる事象(例:駐車場付き物件を車非所有者が契約する等)が2割程度起こっているが、物件を都心に供給しているという立地特性がそれを補い、最終的な稼働率は確保される蓋然性が高い。

 同社の成長の源泉となるのは、重要KPIである仕入物件数・販売物件数や棚卸資産残高の推移である。販売は好調を維持しているが、成長の先行指標となる仕入れは外部環境の影響を受けやすく、若干の計画比ビハインドが見られる。そのため、仕入れ数の計画値は変動要素が大きく、予測の難易度が高い。また、利益率を予測する上では金利動向が重大なリスク要因となる。金利が上昇すれば不動産評価に用いられるキャップレートも上昇し、物件評価額が低下するため利益率を圧迫するため、金利上昇リスクが意識される局面では業績計画は保守的に見積もらざるを得ない。こうした事業環境を踏まえ、同社は財務規律を重視している。不動産開発事業は資金調達によって投資が加速し将来収益に繋がる側面を持つが、まずは各金融機関との連携による借入を基本とし、自己資本比率を20%~25%の間で推移させる計画である。同社はこの範囲内で年率20%の安定的な営業利益成長は十分に可能と見ている。ただし40%~50%といった非連続的な成長が見込める大規模な投資機会が到来した際には、既存株主への説明を尽くした上で増資などのエクイティファイナンスも選択肢となり得ると説明している。加えて、販売件数についてもその計上タイミングは意図的に調整され得る点に留意が必要である。例えば2025年上期の販売件数が計画に対して数件未達であったが、これは竣工前から開始するリーシングが好調であったため、満室稼働に近づけて物件の評価価値を最大化してから売却するという戦略的な判断によるものである。

 個別の大型案件の分析も重要である。例えば2025年4Qに予定されていた南麻布の大型案件は3Q売却契約が締結されたが、これはバリューアップ型案件であるため、売上高への貢献は大きいものの新築開発に比べて売上総利益率は抑制的になると想定される。さらに、M&Aによるシナジーも将来の業績予測に不可欠な要素である。2025年に子会社化したサンクス沖縄社は、16年以上の業歴で培った沖縄県内での強固な不動産・建設業者との信頼関係を構築しており、特に人件費の交渉力に優位性を持つ。これはリゾート開発等において大きなシナジーとなり得るが、その業績への本格的な貢献は来期以降と見込まれ、今期における影響は軽微に留まると分析される。

我々の予想は売上高・営業利益ともに会社予想と同水準となった。我々の予想は売上高・営業利益共には会社予想と同水準となった。

 今後の同社の業績を見通す上で、フロー収益である不動産開発事業の成長に加え収益基盤を安定させるストック事業の拡大が重要な鍵となる。同社は、2027年の中期経営計画最終年度までに不動産運営からもたらされるストック売上を全体の3割まで高める方針を掲げている。特筆すべきは、AM報酬がほぼ100%、賃貸管理やホテル運営も9割を超える高い粗利率を持つ点であり、ストック売上の比率向上は、グループ全体の収益構造の安定化と質の向上に直結する。このストック収益拡大を牽引するのが、アセットマネジメント事業におけるAUMの拡大である。第1号ファンドに続き、第2号、第3号ファンドを継続的に組成し、AUMを積み上げることが最重要課題となる。同社の開発物件の売却先は国内外の機関投資家やファンドプレイヤーが大部分を占めており、継続的な関係を構築している。並行して主力の不動産開発事業が拡大すれば、棚卸資産残高の増加に比例して賃貸管理の受託戸数や運営ホテル数も増加し着実なストック収入の蓄積が見込まれる。以上のように、同社は高成長を続けるフロー事業を基盤としつつ質の高いストック事業を両輪とすることで事業規模の拡大と経営の安定化を両立させるフェーズに入っている。投資判断を下す際にはこのような点を踏まえた上で慎重に判断する必要があるだろう。