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292イフジ産業25年3Q決算動向と今後の見通し

公開日:2025年04月03日
Note


売上・利益の動向と業績ポイント

最新決算(2025年3月期第3四半期累計:2024年4~12月)では、イフジ産業の売上高は 183億94百万円(前年同期比5.7%減)と減収でしたが、営業利益は24億88百万円、経常利益は24億34百万円といずれも前年同期比45%前後の大幅増益となりました。最終利益も16億52百万円で前年同期比12.5%増と増益を確保しています。減収増益の要因として、主力の液卵関連事業で原料である鶏卵の仕入価格低下が収益性改善に寄与した一方、販売単価は鶏卵相場下落で低下したものの販売数量増加で補えたことが挙げられています。この結果、期間累計では過去最高益を更新し、高い利益率を維持しました。特に直近第3四半期(2024年10-12月)は、経常利益が前年同期比**2.1倍(9億円)に急増し、売上営業利益率も6.6%→11.8%**へと大幅改善しています。これは鶏卵相場の変動に応じた適切な価格転嫁やコスト管理により、収益性が飛躍的に向上したことを示しています。業績予想と今後の見通しについて、会社計画では2025年3月期通期の売上高を246億51百万円(前期比+0.6%)、経常利益を25億62百万円(+41.6%)、最終利益を17億22百万円(+7.8%)と増収増益を見込んでいます。経常利益・最終利益は過去最高益の更新見通しで、営業利益率も通期で10%超を予想しています。第3四半期までで経常利益は計画の95%に達しており、進捗率は例年を上回る水準です。会社は第3四半期決算発表時点で通期計画を据え置いていますが、足元の好調な利益動向から計画上振れの余地も示唆されています。ただし、第4四半期(2025年1-3月)は鶏卵価格上昇に伴う原料高騰の影響で経常利益が前年並み水準(前年比▲1.5%程度)にとどまるとの試算もあり、原料コスト増への警戒感も見られます。

鳥インフルエンザ症例数の推移(2024~2025年2月


日本国内の高病原性鳥インフルエンザ発生状況を見ると、2023~2024年シーズン(昨シーズン)の家禽農場での発生件数はわずか11件と、過去最多だった前シーズン(2022~2023年シーズンの84件)から大幅減少していました。しかし、2024年秋以降の現シーズン(2024~2025年)は再び感染が拡大しています。国内では2024年10月17日に今シーズン初の農場感染事例が確認され、その後急増しました。2025年1月11日時点で14道県・26事例の農場感染が報告され、約404万羽もの鶏が殺処分の対象となっています。この時点で昨シーズン(11件)を大きく上回る発生数となっており、感染拡大ペースは近年でも異例の速さです。
月次の推移をみると
昨シーズンは発生が散発的(2023年11月に初発生以降、2024年2月まで小規模に留まる)でしたが
今シーズンは10月から連続的に発生が続いています。
2024年10月に北海道や岡山県で最初の事例が出て以降、11月~12月にかけて多数の農場で感染が確認され、2025年1~2月も発生が継続しました。具体的な月別件数は公開資料ベースで以下のような傾向です

2024年10月: 北海道などで初発生(数件)
2024年11月: 本州各地へ広がり発生件数が二桁に増加 2024年12月: 西日本を中心に更なる拡大
2025年1月: 南西地域まで含め発生累計26件に到達
2025年2月: 月初から追加発生が報告され、累計件数はさらに増加中

このように2024年秋~2025年冬にかけての発生件数は昨年同期を大幅に上回る水準となっており、養鶏業界に深刻な影響を及ぼしています。大量の採卵鶏が殺処分された結果、国内の卵供給量は大きく減少しています。

卵価格への影響と今後の価格見通し

鳥インフルエンザによる採卵鶏の大量殺処分は卵の供給不足を招き、卵価格の高騰を引き起こしています。実際、2023年前半には飼料高や過去の鳥インフル流行も重なって卵価が記録的水準に達しました。その後、2023年春~夏にかけては卵価は低下・安定し、2024年は夏場まで比較的落ち着いた価格推移となっていました(2024年5~6月の卵平均価格は前年より50円程度安い水準)。しかし2024年秋頃から再び上昇基調に転じ、鳥インフル拡大と需要期が重なる11月には前年同月比▲15円程度まで迫る水準(216円)に上昇しました。そして感染拡大が深刻化した2025年に入り卵価は急騰しています。卸売市場の指標で見ると、福岡地区のMサイズ卵価格は前年の2024年2月に1kgあたり約180円だったものが、2025年2月には290円前後にまで上昇しています。同様に東京地区でも、2025年2月中旬時点で1kgあたり315円と年初(1月上旬の225円)から約4割上昇し、過去最高値(350円)に迫る水準となりました。これは国内各地での鳥インフルエンザによる**鶏の大量淘汰(供給減)**が主因で、地域別(名古屋・大阪・福岡など)でもほぼ同様の値上がり傾向が確認されています。今後の卵価見通しについては、業界では「鶏の再育成には時間がかかるため、高値傾向は夏頃まで続く」との見方が示されています。実際、感染拡大が収束しヒナの導入・鶏群再建が進むまで数ヶ月を要することから、2025年春~初夏にかけては卵供給が逼迫した状態が続く可能性が高いとみられます。一方で、夏以降は新たな産卵鶏の増加や需要の一巡により、卵価が徐々に平常水準に戻るとの予測もあります。もっとも、新たな感染発生や予防的淘汰の状況次第では高値長期化のリスクも残るため、今後数ヶ月の疫病動向が価格に与える影響は注意深く見守る必要があります。
卵価格高騰がイフジ産業業績に与える影響 卵価格の変動は、液卵メーカーであるイフジ産業の業績に直接的な影響を与えます。一般に原料卵価格の上昇は同社の調達コスト増要因となり、利益率を圧迫するリスクがあります。一方で、卵不足による市場価格高騰時には液卵製品の販売価格も引き上げやすく、売上高は増加する傾向があります。イフジ産業の場合、過去数年間で卵相場の乱高下を経験していますが、その中でコスト転嫁と量の調整により収益を維持・向上させてきた点が注目されます。直近の動向では、原料卵価格が低下した2024年上期において同社は減収でも増益を達成し、H1営業利益率13%超という高収益を確保しました。これは原料安メリットを享受できた好例です。逆に、原料価格高騰局面であった2023年頃には、売上高は伸びても利益率は圧縮される場面も見られました。しかし2024年下期~2025年初めにかけては、卵価再騰にもかかわらず同社は適正在庫の活用や販売価格調整によって高い利益成長を実現しています。第3四半期には売上高が前年同期比で+15.5%増と増収に転じ、営業利益率も**二桁(11.8%)**に改善しました。これは、需要堅調な業務用向けを中心に販売単価を引き上げつつ、コスト増を吸収できたことを示唆します。もっとも、現在の卵価水準は平常時を大きく上回るため、今後も原料コスト高が長期化する場合には、同社の利益率が一時的に低下する懸念は否めません。例えば、今第4四半期(2025年1-3月)は卵価急騰の影響で経常増益の勢いが一服する見通しとなっています。一方で、卵価高騰は同社製品の販売単価上昇=売上増にも直結するため、減収リスクは小さいと考えられます。実際、卵不足下では食品メーカーや外食産業は安定した液卵調達先を求めるため、シェアの高いイフジ産業には追い風となり得ます。その意味で、卵価高騰は諸刃の剣ですが、同社はこれまでのところ供給量調整や価格戦略で上手く対応し、記録的な利益成長を遂げています。将来的に卵価が落ち着いてくれば原料コストは低減しますが、同時に販売価格も下がるため売上は伸び悩む可能性があります。しかし、過去の実績からは原料安局面で利益率がむしろ高まる傾向が確認できています。従って、極端な相場変動さえ沈静化すれば、安定した収益基盤が維持できると考えられます。鍵となるのは、相場変動に応じた機動的な価格・在庫戦略と、需要動向に合わせた生産調整力です。イフジ産業は業界内で高いシェアと実績を持ち、こうした環境変化への耐性を示してきたと言えるでしょう。

今後の株価へのインプリケーション

以上の情報を総合すると、イフジ産業の業績は足元で非常に好調であり、過去最高益の更新見込みや増配(予想1株配当53円)といったポジティブ材料が揃っています。実際、2024年11月には業績上方修正と最高益予想の発表を受けて株価が急伸する場面もありました。現在の株価水準にはこうした好業績期待が織り込まれていると考えられます。今後の株価に影響を与える要因としては、何より卵相場の動向が挙げられます。短期的には、前述のように2025年夏頃までは卵価高止まりが予想され、この間に原料高による利益率圧迫懸念が浮上すれば、株価の上値を抑える可能性があります。一方で、供給不足に伴う売上拡大やシェア拡大の追い風はプラス材料であり、マーケットはその継続性を注視しています。また、感染拡大の収束時期によっては、2025年後半以降に卵価が平常化し原料コストが低減すれば、同社の利益率が再び押し上げられる展開も期待できます。この場合、業績安定化への期待から株価に再評価が入る可能性もあります。総じて、イフジ産業の株価は卵相場と業績見通しに連動する展開が予想されます。現時点では業績好調と高配当利回り(約3%台)を背景に下支え要因が強い一方、鳥インフルエンザ収束までの不透明感が上値を限定している状況と言えます。投資家としては、卵価動向(月次の卸売価格推移や需給バランス)や政府の対策(鶏の復養支援策など)に注目しつつ、同社の収益耐性を評価していく必要があります。仮に今後、卵価高騰による業績下振れリスクが小さいことが確認できれば、株価にとって追い風となるでしょうし、逆に原料高によるマイナス影響が表面化すれば短期的な調整もありえます。結論として, イフジ産業は現在の卵価高騰局面を巧みに乗り切りつつあり、今期は過去最高益が見込まれるなどファンダメンタルズは堅調です。

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