
日本のオンライン診療・オンライン処方は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大をきっかけに注目を集めましたが、諸外国と比較してその普及率は依然として低いままです。本記事では、日本におけるオンライン診療の普及を妨げている要因を多角的に分析し、今後の展望について考察します。
オンライン診療の認知度は8割を超えるものの、実際の利用経験者は約8%にとどまっています(2023年時点)。コロナ禍では「10年分が3ヶ月で進んだ」とも言われる急速な展開を見せましたが、感染拡大の沈静化とともに利用率の伸びは鈍化しています。
項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
オンライン診療の認知度 | 80%以上 | 名前は広く知られている |
実際の利用経験者率 | 約8.0% | 2021年からほとんど増加していない |
「使いたいと思わない」層 | 17.7% | 認知はしているが利用意向がない |
医療機関の届出率 | 15.0% | 2021年6月末時点(2020年4月の9.1%から上昇) |
オンライン処方の件数は、特にコロナ禍以降、急激な増加を示しています。特に2022年以降は大幅な伸びが見られます。
時期 | オンライン処方件数 | 前年同月比 |
|---|---|---|
2019年6月 | 136回 | - |
2020年6月 | 1,278回 | 約9.4倍 |
2021年6月 | 696回 | 約0.5倍(減少) |
2022年6月 | 35,595回 | 約51.1倍 |
2023年6月 | 58,882回 | 約1.7倍 |
日本の医療制度は長年「対面診療原則」を基本としてきました。近年、規制緩和が進められていますが、依然として制度上の制約が残っています。
年 | 主な制度変更 |
|---|---|
2018年 | ・厚生労働省がガイドライン策定 |
2020年4月 | コロナ特例:初診からのオンライン診療や電話診療を時限的に解禁 |
2022年 | ・特例措置の大部分を恒久化 |
現在でも、初診からオンライン診療を行うには事実上「かかりつけ医」との関係性が前提となっており、また医師には研修受講が義務付けられるなど、参入障壁が存在します。
日本医師会は一貫してオンライン診療に慎重な姿勢を示しており、特に初診からのオンライン診療については強い懸念を表明しています。医師側からは以下のような懸念が示されています:
医師会の政治的影響力の強さから、政府・与党も大胆な規制改革に踏み切りにくい状況があります。
課題領域 | 具体的な問題点 |
|---|---|
医療機関側 | ・ITシステム導入・運用のノウハウ不足 |
インフラ面 | ・地域による通信インフラ格差 |
多くの医療機関、特に中小規模の医療機関では、これらの技術的ハードルにより「様子見」の姿勢を取っています。
患者側の要因としては、以下が挙げられます:
オンライン診療では診療情報や個人情報がネット上でやり取りされるため、情報セキュリティに関する懸念も大きな障壁となっています:
国/地域 | オンライン診療の状況 |
|---|---|
米国 | ・医療過疎地対策として早くから整備 |
フランス | ・2018年から一部疾患で公的保険適用 |
英国 | ・プライマリケアで電話診療やビデオ診療を積極活用 |
北欧諸国 | ・国民IDを活用した電子処方と連動したサービスが普及 |
欧米では、医療アクセス向上や効率化のメリットが課題を上回ると認識され、政府の政策支援もあって、オンライン診療が医療システムに組み込まれつつあります。
コロナ禍を経て規制は大きく緩和され、国民の意識も変化しつつあります。今後、オンライン診療がさらに普及するためには以下の取り組みが重要です:
オンライン診療は対面診療の代替ではなく、適切に補完するものとして位置づけられるべきです。日本の高齢化や医師不足といった構造問題を考えると、オンライン診療は今後ますます重要な役割を担うことが期待されます。安全性と有効性を確保しつつ、デジタル技術を活用した医療の新たな形を模索していくことが、日本の医療システムの持続可能性を高める鍵となるでしょう。
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