
証券コード2962 テクニスコについて今期の業績予想と事業内容を紹介する。同社は1970年2月に株式会社ディスコの研削切断加工技術を研究開発する目的で設立された株式会社精密切断研究所に遡る 。資本関係においては、1972年9月に株式会社ディスコの出資を受けてディスコグループに参画し、1989年4月には同社の100%子会社となった経緯を持つ 。大きな転換点となったのは2014年10月であ、MBOの実施により親会社であった株式会社ディスコから株式を買い取る形で独立し自立した経営体制へと移行した 。この際、代表取締役である関家圭三氏を中心としたオーナー家が株式を引き受けたが、関家氏はそもそもディスコの創業者一族の出身であり、この背景がオーナー家による高い持株比率の維持に繋がっている 。独立後の2016年12月にはオーストリアの企業よりシルバーダイヤ(銀とダイヤモンドの複合材料)の製造に関する特許の独占的使用許諾契約を締結 。2017年8月にシンガポール子会社を設立して同製品の製造・サンプル提供を開始し、2023年7月には東証スタンダード市場への上場を果たしている 。
同社の事業は精密加工部品事業の単一セグメントであり、主にヒートシンク・ガラス・その他の3つの製品群で構成されている 。
主力のヒートシンク製品とは電子部品が機能する際に発生する熱を吸収・放熱し、性能低下や故障を防ぐための不可欠な構成部品である。近年、金属の切断・溶接や外科手術等に使用される産業用レーザーの高出力化や通信インフラの高速化、AIチップ(GPU)さらには次世代通信を担うシリコンフォトニクスといった分野ではデバイスの高性能化に伴い、発熱密度は増大の一途をたどっている。こうした放熱の限界という物理的な課題を解決すべく、同社が次世代の切り札として展開しているのが独自素材であるシルバーダイヤ(AgD)である。シルバーダイヤは高い熱伝導率を持つ銀とダイヤモンドの複合材料であり、テクニスコが世界に先駆けて展開する初の独自材料製品である。例えば、銅(Cu)やアルミニウム(Al)は熱伝導率こそ高いが、熱膨張率が大きいため高出力素子と組み合わせると伸縮差によって素子が損傷するリスクがある。一方で窒化アルミニウム(AlN)や銅タングステン(CuW)はチップに近い熱膨張率を持つが放熱性能が限定的であった。これに対しシルバーダイヤは20℃において約1,000 W/mKに達する圧倒的な熱伝導率と半導体素子(GaAs, GaN)と同程度の低い熱膨張率(約5〜7 ppm/K)を両立しており、熱ストレスによる素子破損を防ぎつつ、極限の放熱を可能にしている。この画期的な素材の展開を支えているのが、2016年にオーストリアのPlansee SE社と締結した独占的な特許使用許諾契約であり、同社はこのライセンスに基づきダイヤモンドを含有するため加工が極めて困難な素材を独自の精密加工技術を駆使して製品化することに成功し、量産体制を構築している。

このシルバーダイヤは銀やダイヤモンドという極めて高価な原料を使用しているため部品単価は従来の素材に比べて非常に高額である。一般的な家電製品などの放熱においては安価で加工しやすい銅やアルミニウムで十分にその役割を果たすことができる。しかしその卓越した放熱効率によってヒートシンクのさらなる小型化が可能になり、従来は複雑で高コストな水冷システムが必須だった機器を空冷で稼働させることが可能となるとされ、さらにデータセンター等のサーバー液冷化を回避できるなど、システム設計全体でのコストダウンや高性能化に寄与するメリットは極めて大きく、高価格を許容してでも採用する価値のある素材と認識されつつある。
ガラス製品は光透過性や絶縁性を持つ電子部品用ガラスに微細な形状加工や回路形成を施した部品を提供している 。自動運転技術に使用されるLiDARセンサー向けのキャップガラスやバイオ・医療分野の検体分析用マイクロ流路ガラス、次世代の半導体パッケージング技術として注目されるガラス貫通配線基板(TGV)などが主な製品である 。
その他はシリコン材料や各種金属、窒化アルミニウムなどのセラミック材料の精密加工に加え、自社の加工プロセスで培った技術を活かしたダイヤモンドツールの製造販売を行っている 。
テクニスコは現在汎用品の価格競争から脱却し、シルバーダイヤでなければ技術的に成立しない先端領域への集中を鮮明にしている。その戦略の一環として粗利率が低い中国市場向けのCACサブマウント事業からは実質的に撤退し、シルバーダイヤを筆頭とする重点戦略製品へとポートフォリオをシフトさせることで粗利率40%以上の高収益体制への転換と利益率の最大化を追求している。同社の競争力の源泉は「クロスエッジ® Technology」を標榜する切る・削る・磨く・メタライズ・接合という本来は専業メーカーごとに分業されがちな精密加工技術自社内で一気通貫ことにある。このワンストップ体制を武器に試作から量産までを自社内で行うことで、産業機器から宇宙航空、ライフサイエンスに至る幅広い市場に対し、他社には模倣困難な高付加価値製品を供給している。
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